■ カリンニコフ 《交響曲 第1番》 ベスト盤は? (2004.4.13)


■ ネーメ・ヤルヴィ指揮 スコティッシュ・ナショナル管弦楽団 (2004.4.12)

当面のベスト盤でしょうか。テンポも中庸、バランスの良い安定感のある演奏です。
オーケストラにも余裕があります。録音も問題はありません。
【録音1987年。Chandos CHAN 9546】

特に第2楽章で、この曲の叙情性を存分に歌いきっていると思います。
ゆったりとした木管のメロディが、リラックス感を誘います。





■ エフゲーニ・スヴェトラーノフ指揮 ソヴィエト国立SO (2004.4.12)

これは格別の演奏だ。圧倒的にテンションが高い
しかも自家薬籠中の演奏という感じ、手兵を率いる強みなのか。
ダイナミックの幅も広い。木管も思い切って吹いている。
【録音1975年。CDKM 1008 (韓国レーベルか?)】

録音は古くモノーラル的な音場。ノイズもある。
最終楽章のコーダは、アンサンブルも乱れてしまう。だが盛り上がりはすごい。
日常的に繰り返し聞くにはちょっとつらいかも。



■ エフゲーニ・スヴェトラーノフ指揮 NHK交響楽団 (2004.4.12)

ライブ録音。最後に熱狂的な拍手とブラボーが入っている。
おそらく、生で聞いたら一番面白い演奏だったかもしれない。
【録音1993年 NHKホール(ライブ)、キングレコード KICC 3018】

N響のベートーヴェンを思わせる重厚な響きが独特のアクセントだ。
残念ながら爽快感には欠ける。第4楽章はまるでチャイコフスキーではないか。




■ トスカニーニのカリンニコフ 《交響曲第1番》 (2003.2.1)


AO氏のご厚意でトスカニーニ/NBC響のカリンニコフの交響曲第1番を聞くことができた (RELlEF CR 1866, MUSIC OF RUSSIAN COMPOSERS)。演奏はトスカニーニそのもの。切れ味の鋭いインテンポの演奏。弦のカンタビーレと、合奏の強烈なアタックの対比が印象的である。
* HMVでRELlEFの正規盤を入手することができた(2004/6)

特にトスカニーニの特徴が発揮されるのは第2楽章だろうか。まさにヴェルディのオペラ・アリアを思わせるカンタビーレの世界が展開される。ポルタメントのかかった弦が、第1楽章とは対照的なゆったりしたテンポで歌う。そして、弦のピチカットをバックに木管が響く。このピチカットの律動感はトスカニーニ以外の演奏では絶対に聞けないものだ。弦合奏の高まりでは、かすかにトスカニーニのうなり声が聞こえるようにも思える箇所もある。楽章の終わりに近づくにつれさらにテンポを緩める。

演奏時間を、例えばクチャル (NAXOS盤)と比較してみよう。
楽章 トスカニーニ クチャル
T 9'52" 14'12"
U 7'19" 7'08"
V 7'07" 8'09"
W 8'27" 9'07"

第2楽章を除くとすべての楽章でトスカニーニの方が演奏時間が圧倒的に短いのである。逆に第2楽章はトスカニーニが長い。完全にカンタビーレの印象と一致する。もちろん、演奏スコアの問題は無視しての話ですが。

録音状態は、残念ながら元のアセテート盤の状態が良くないのか雑音・歪みともに耳につくが、1943年当時の録音としては水準であろう。鑑賞には堪える。例の8Hスタジオ特有の超デッドな響きである。ラジオ放送用の公開録音であろう、最後に盛大な拍手が入っている。


■ カリンニコフ 《交響曲 第1番》 隠れた名曲か? (2003.1.27)

中古CDショップを冷やかす楽しみは色々あるが、廉価版のNAXOSのコーナーには必ず目を配るようにしている。今まで聞いたことのないような作曲家・演奏を目にする機会が多く、バロック以前の古典曲のレパートリーも豊富である。もちろん価格の安さの魅力が大きいのだが。先日、手に入れたのはカリンニコフの 《交響曲》 第1番と第2番が1枚に収まったCD。演奏はウクライナ国立交響楽団、指揮はテオドレ・クチャル (NAXOS8.553417)。日本語の帯には、病と貧困と失意のうちにわずか34歳で世を去った天才叙情派作曲家、とある。
【録音1994年。NAXOS 8.553417】】。

このカリンニコフは初耳であったが、帰宅してからさっそく聞いてみると実に良い曲である。惹句を裏切らない、叙情的な心地よいものである。隠れた名曲ではないか。ついでにインターネットを「カリンニコフ」で検索してみると、驚いたことに「カリンニコフ交響曲第1番」で ズバリでホームページまで開かれているのだ。知らぬはこちらばかりだったか!このホームページによると、交響曲第1番には10種ほどのCDが発売されている模様。トスカニーニ/NBC響の演奏もあるとのことだ。

《交響曲 第1番 ト短調》
第1楽章 アレグロ・モデラート
澄みきった青空の下、大草原を疾駆する馬の群を思わせる爽快さがある。さわやかで快調。途中から出てくる哀愁を帯びたテーマも伸び伸びしていて気に入った。かすかにスラブの響きがあるかな。このテーマがフーガ的に繰り返される。ハープが煌めく。

第2楽章 アンダンテ
ハープの無窮動的な響きにのって、ゆったりしたもの哀しい木管のテーマがフルートに引き継がれる。静かなハープの響きは水流のきらめきを思わせる。第1楽章とは対照的。終始ハープがひそやかに奏でられ、楽章の終わりまで続く。

第3楽章 スケルツォ
何かゆとりを感じさせるスケルツォ。オーボエの印象的なテーマ。舞踏的音楽へ展開する。

第4楽章 アレグロ
リズミックな楽章。壮大な金管の斉奏で盛り上がる。終結ではティンパニが打ち鳴らされる。
全曲を通して爽快さの印象は一貫して変わらない。録音も快適、左右の広がりも十分ある。ハープをよく捉えている。

◆「カリンニコフの交響曲第1番なHP」は → こちら

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