■ ニーノ・ロータの哀愁 (2000.4.15)
大野和士のカールスルーエでの演奏スケジュールを見ていたら、室内演奏会の予定に目が止まった。2000年6月18日、バーデン州立歌劇場では大野がピアノを弾いて、歌劇場管弦楽団のメンバと室内楽をやることになっている。曲目は、ニーノ・ロータの《フルート、ヴァイオリンとピアノのためのトリオ》、ほかにピアソラの曲もある。あの映画音楽のニーノ・ロータである。
タイミング良く、中古CDの出物にぶつかった。『ニーノ・ロータ作品集』演奏はクレーメル&クレメラータ・ムジカ(KKCC-2247 BIS-CD-870)。CDの帯の惹句には、「現代のオアシス、ニーノ・ロータ」とある。
ニーノ・ロータは、映画音楽を約150本手掛けている。《ゴッドファーザー》《ロミオとジュリエット》《道》《甘い生活》等々。1911年ミラノ生まれ、1979年ローマで死んだ。1931年〜32年、アメリカ留学。交響曲、ピアノ協奏曲、チェロ協奏曲がある。そしてオペラは11曲も創っている。
さっそくCDを聞いた。
《小さな音楽の捧げ物〜木管五重奏のための》 (1943) 映画音楽そのもの。哀愁のある響き、冒頭から歌謡的なテーマが繰り返す。
《サラバンドとトッカータ〜ハープのための》 (1945) ハープの独奏。やすらぎのテーマは映画の《ロメオとジュリエット》を思い出させる。
《フルート、ヴァイオリンとピアノのためのトリオ》 (1958) 緊張感の高いクレーメルのヴァイオリンが全曲を圧倒的に支配している。
第1楽章(アレグロ・マ・ノン・トロッポ) 一貫して流れるせわしない駆け足のピアノ。都会の喧噪だろうか、不安的な響きのヴァイオリンはストレスを表すのだろうか。疲れて家に帰って眠る。それでもストレスは安まらない、昼間の騒音が頭に鳴り響いている。
第2楽章(アンダンテ・ソステヌート) フルートとヴァイオリンの対話。相変わらずヴァイオリンは緊張しているが、ひとときの安らぎに向かう。ニーノ・ロータの本領である叙情的楽章。
第3楽章(アレグロ・ヴィヴァーチェ・コン・スピリト) 再びギャロップが戻る。いらいら感は消えて、明日への期待が潜んでいる。この楽章では、ピアノとヴァイオリンの協調がある。
《遊ぶイッポリト〜ピアノのための》 (1930) しゃれた短いピアノ曲。ドビュッシー?
このCDはお奨めです。春の夜のしじまに。