■ サヴァリッシュの DVD《ニーベルングの指環》 (2000.8.11)

中古CD屋で《ニーベルングの指環》全曲のDVD (TOBW-3508〜15)を見つけた。サヴァリッシュの指揮したものである。定価は税抜きで38,000円のものが、27,800円であった。未開封とのことだが、ファクトリー・シールが一部破けていたのが中古屋に出回った理由か、まあ実害はない。DVDプレーヤは未だ持っていないのだが、「これは買い!」との決断で思い切って手を出した。この東芝EMIから出ているDVDのタイトルは、《ニーベルングの指輪》で、「ゆびわ」は「指輪」である。もっとも中の諸井誠の解説には断りがあって「指環」となっている。ちなみにレヴァイン版は「指環」。まあ、どちらでも良いか。

8枚組であるが、うち1枚は「リングへの招待」と題したボーナスディスクなので、実質は7枚。《ラインの黄金》が1枚で、他はすべて2枚組。主要な演奏スタッフを挙げると。指揮 ウォルフガング・ザヴァリッシュ、演奏 バイエルン国立歌劇場管弦楽団、演出 ニコウウス・レーンホフ。ブリュンヒルデ ヒルデガルト・ベーレンス、ジークフリート ルネ・コロ、ウォータン ロバート・ヘイル、ローゲ ロバート・ティア、アルベリヒ エッケハルト・ウラシハ他。

DVDプレーヤーはないので、残念ながらパソコンで見るしかない。デコーダー・ソフトはサイバーリンクのPowerDVD 2.0、パソコンに添付されてきたもの。CPUパワーはPVの600MHzなので問題ないだろう。なぜかコントラストの弱い画面、ソフトでは調整の余地がない? 音声もパソコン付属の超小型スピーカでは、かろうじてオリジナルのスケールを垣間聞くだけである。

《ラインの黄金》をまず見た。
何より全曲150分が映像・音声ともにDVD1枚で間に合ってしまうのは、やはり大したものである。かつてのアナログレコードはまだしも、LDを重々しく取り出して、さあこれからワグナーを聴くぞ、という心理的バリアーがまったく無くなる。映像はハイビジョン収録、パソコンの17インチ画面でもその片鱗はわかる。なめらかで緻密である。音声はもちろんデジタル。しかしまだDVDの機能をフルには使っていない。例えば日本語字幕のON/OFF制御はない。

ローゲがまず冒頭に登場し、「昔、昔、……」と書き始める。《ニーベルングの指輪》全体が、一連のおとぎ話であるということか。楽劇を通してローゲは狂言回しをつとめる。要所要所で、もっともらしい所作をするのである。《ラインの黄金》の幕切れでは胸像(ローマの皇帝?)に目隠しをして、手袋を投げ捨てて退場するのであるが。思わせぶりで煩わしい印象である。

地下のニーベルハイムでアルベリッヒの意のままにこき使われる兵隊の様子がスターウォーズを思い起こさせる。ソロ船長にレーザーガンでバッタバッタと撃ち倒される兵士の一軍である。そういえば、ストーリー進行はすべて宇宙船の翼の上らしい。DVDからキャプチャした画面(無断です)は、地下から宇宙船に戻ったウォータン、ローゲ、アルベリヒ。

最終第4場、ワルハラへの入場。どこか城の一室に入って行く演出。壮大に金管が鳴り響く割に、肩すかしの感がある。虹の架かったロマンチックな演出が懐かしい。

添付の諸井誠さんの楽曲解説「《リング》の位置づけ」は、とりわけ興味深い。長期間にわたって作曲の一貫性を保ったとしてワーグナーとマーラーを比較している。作品もお互いにぴったり対照する。例えば、ワーグナーの《さまよえるオランダ人》とマーラーの《交響曲第1番 巨人》。さすらいのテーマが共通している。《ラインの黄金》は《交響曲第4番》。ずーといって、《パルジファル》は《交響曲第9番》、内省的な深い精神性を共有しているとのこと。










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