■ クプファー へのインタビュー記事 (日経新聞2002.1.27)
の要約
「ベルリンと横浜の神奈川県民ホール、東京のNHKホールは違って当然。3つの異なる舞台を創造する前提で、演技や照明に細かく注文をつけた。私が発見した解決策を素早く理解、実現する日本側スタッフの質は異国の音楽、ワーグナーを深く愛する聴衆と同じくらいに高い」
「いつ、どこの社会にも文化が問題意識をぶつける対象の矛盾は存在する。『指環』が書かれた19世紀後半は欧州の資本主義が飛躍的に発展、新しい経済システムのひずみも表面化した。金銭や権力によって生じる自然や人間の破壊、悲劇的な結末は戦争とともに今日なお、克服されていない矛盾だ」
4部作の最後を飾る「神々の黄昏」の描く究極の破壊は2001年9月11日の米国同時テロを経て「より生々しい警告となった」という。
「社会の様々な衝突を表現する読み替えがなされ、現代に生きる人々にも古典が生々しく映ればこそ、オペラは21世紀まで生き延びてきた」
◆演出家 ハリー・クプファー 旧東独末期を代表する演出家。ペルリン国立歌劇場音楽総監督で首席指揮者のダニエル・バレンボイム、舞台装置家ハンス・シャヴァーノフと共同で制作したワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」4部作を日本で連続上演。1935年生まれ。ライプチヒで演劇学を学び、58年にドヴォルザークの「ルサルカ」でオペラ演出デビュー。ワイマールやドレスデンを経て81年から旧東ベルリンのコーミッシェオーパーの主任演出家。バイロイト音楽祭には78年の「さまよえるオランダ人」で初登場。演出オペラは140作を超える。
バレンボイムとは「ベルリンの壁」崩壊前年の1988年から統一直後の92年まで旧西独バイロイト音楽祭の「指環」4部作を制作。冷戦終結後、再びバレンボイムと組み、環境破壊に目を向けた90年代バージョンをベルリンで一から作り直した。2002年のベルリンの音楽祭「フェストターゲ」で、ワーグナーの主要十作を読み直し一挙に再演する。
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