インターネットを中心として電子メールの重要性は今後ますます増大する。既にグループウェアの基幹コンポーネントとしての役割を果たしている。
電子メールの得失
第一の特長は、送信者と受信者の同期が不要であること。電話のようにお互いが電話機を握りしめて、口角泡を飛ばす必要はない。第二は、電子メールを一旦受信すれば、相手とまったく同じ情報を共有できることである。
そしてデジタルデータの特徴として、自分が受信したメールを重要度に応じピックアップして読んだり、あるいは必要事項で検索することもできる。また、受信メールを別の人に転送することもできるし、ワープロの文書に張り付けることもできる。
従来から言われている、速報性とか、記録性とか、同時通報性などの利点もある。忘れてならないのは、個人に対する機密性であろうか。電子メールが一番活躍しているのは社内恋愛の場、という調査結果もある。ファクスで今晩のデートを申し込むことはできませんね。
一方、相手がメールを読んだのか読まないのか不明なのが電子メールの欠点である。だから受け取った方は、すぐ回答を返信するのがエチケットの一つである。
結論を先に
結論をまず冒頭に置いて、読み下せるように書くこと。そして短文で構成すること。
また件名で内容をズバリ表わすようにすることが大切である。件名も、「……の件」ではなく、「……は……する」と、動詞の入ったものにするのがよい。
社内文書ではよけいな前書きをやめ、ビジネスライクに直ちに本文に入るのがよい。「拝承」とか「お世話になっていますとか」の前書きは不要である。敬語もいらない。
センタリングとかの書式にこだわるのも意味がない。パソコンの狭い画面に大きな情報量を載せるように考えること。画面をスクロールせずに読めるように、書くこと。
重点先行の趣旨に従って、まず結論から書く習慣を着けよう。
段落記号(◆)の提案
電子メールでスペースを活用するために、視覚的に訴える力が強い新しい段落記号を提案したい。すでに新聞ではいろいろ工夫し、改行の代わりに特別な記号を使っている。
例えば朝日新聞では天声人語で"▼"を使っている。直前には、まる( 。)は打たない。
毎日新聞の余録では"▲"を使っている。やはり直前にまる( 。)は打たない。
日本経済新聞の春秋では"▼"を使っている。直前にはまる( 。)を打つ。
いずれも縦書きの文章である。
電子メールは横書きなので、"◆"を個人的には提案したい。どうでしょうか?
例 ◆件名は内容が分かるように
仕事文書の定義に従えば、機能仕様書を読む人が、間違いなく正しいプログラムを開発できなければいけないのである。
受注ソフト開発では機能仕様書がユーザとの唯一の接点である。従って、業務知識を前提としてユーザの分かる言葉で、機能仕様書を書く必要がある。
表を利用した機能の明確化
機能を明確にするためには、どんな目的で、何を実現するかをはっきりすることである。より明確に表現するために表の利用を考えること。表を利用すると次のような利点がある。
・仕様の整理・統合・シンプル化・明確化に有効である。
・項目の比較が容易なので仕様の抜け・重複・不統一などが明らかになる。
・マトリクス形式で階層構造を表すことができる。
・効率的にレビューを実施できる。
議事録の役割
開発当初にもくろんだ機能は、時間の経過や周囲の環境とともに変わってくる。特に受注プログラムの場合は、ユーザの言い分はどんどん変わるのが普通である。仕様変更も当然重なってくる。このような変化に追随し、プログラムを完成させるためには、議事録などで機能仕様書のような定型ドキュメントを補完することが、どうしても必要である。
議事録には、大きく二つの方式がある。@逐次的記録。誰が何と発言して、どう回答したか、など時間の経過に従って記録する方式である。これは臨場感があり、会議の雰囲気が伝わるというメリットがあり、書く手間も少ない。もう一つは、A要約的記録。会議の結論、決定事項、宿題等々を項目ごとにまとめて書く方式である。まとめるのには知恵が必要である。いずれにしても、先頭で会議の結論がわかるようにすること。できればA41ページにまとまるとベターである。
パソコンなどを活用し、議事録をデジタルデータ化するメリットは、第一に検索性に優れるということである。たとえば、月日とか、特定の顧客名で議事録を検索できる。電子メールによって複数の人に同時に送信するのも容易である。議事録を切り貼りして機能仕様書に転用することも簡単にできる。
◆仕様書より優先する議事録
◆決まらなかったことこそ書いておくのが議事録
◆メモを取る代わりに議事録を書く。議事録はその場で書け。
◆議事録は書いた方が勝ち。自分の都合のよいように書く議事録
◆配布先の欄を作ると落ちがなくなる
◆議事録を書くには、まず知識。……新人には非常に勉強になります!
◆議事録を書かなかったため大赤字
◆次回開催日の明記
◆固有名詞をきちんと正しく書くこと。会社名、人名、プロジェクト名、略号、……
→検索するときに一番使用頻度が高いのは固有名詞である
(例) 「新日鉄」か「新日鐵」か、「冨士写真フイルム」か「冨士写真フィルム」か、
「キヤノン」か「キャノン」か、「日本コロムビア」か「日本コロンビア」か?
◆年月日の記入は必須
(伊藤健一『トラブルをさけるための 議事録の書き方』)
議事録は差分でしかない
議事録は本来の仕様書の差分である。従って議事録だけでは全体像を把握できない、という欠点が出てくる。適当なタイミングで、仕様書を全部印刷して見るなどして全体像を再確認することが必要である。
チェック項目
◆再現性があること。例えば性能測定結果としてグラフを載せているが、グラフには実測点のプロットもなく測定の前提条件の記述もない。再現性や実性を疑われてもしょうがない。
◆技術的ポイントに絞って報告すること。処理を長々と記述してあるのがある、いったい何を言いたいのか?苦労したことを言いたいのはわかるが、読む人に価値あるメッセージとなっていない。
◆他部署への参考として失敗事例もきちんと報告すること。独りよがりの自慢話よりも、本当の原因を分析した失敗事例の報告の方が価値がある場合がある。品質不良、性能未達、PP導入失敗、工程遅延、原価オーバ等々の原因と解決策とか。
◆マニュアルもどきの単に機能説明に終わらせないこと。もう一歩踏み込んだ報告とする。
◆参考文献が自部署の研報やマニュアルだけというのはさびしい。少なくとも社内の関連研報は調査すること。調査していないとしたら、技術者として失格である。
◆競合製品との比較をフェアに行うこと。自分の都合のよい点だけを比較していないか。明らかにカタログだけで比較しているのがある、自分の手で実際に触って評価することが必要である。井の中の蛙、夜郎自大にならないこと。
文書を書き上げたならば、必ず見直しをすること。製品開発と同じように審査(レビュー)が必須である。レビューは、一日おいて翌日見直すのが効果的である。文章を書き上げた直後は、まだ頭がかっかしているため冷静な見直しができないのである。
他人にも見てもらうのがよい。前提条件をとばしている場合とか、難しい用語を事前定義せずに使っているなどのケースが即座に見つかる。
他人に読んでもらう
自分では全く気付かなかった文章の欠点が、他人からはたちどころに指摘される。特に第三者による査読は、文章の分かりやすさを向上させるためには、てきめんに効果がある。
ただ、こういう注意は必要である。よく経験することであるが、自分ではよく書けたと思った文章を他人によく分からないと言われて書き直しを指摘されたとき、大部分の人は、かなりむっとするようだ。文章の書き直しを指導されることは、大げさには人間の尊厳を傷つける感じになるのか?
だから文章のレビューを引き受けたときは、その点に十分注意していねいに指導することが必要である。
(全員が同じ意識レベルにあれば、ほんの一言の注意でも効果的)
長い自動車用トンネルの中は照明されてはいたが、停電のとき大事故が起こるのを防ぐためにライトをつけておくことが必要であった。
そこで、こんな標識を出した。「注意 前方にトンネルがあります ライトをつけて下さい」
トンネルの出口から少し行った所に、広々とした眺めのよい休憩所があった。1日何百人という旅行者がそこに車を停めて、眺めを楽しんだ。しかし、そういう何百人のうち十人以上が、車に戻ってみると、しまったライトがつけっぱなしだった。バッテリーが上がっちゃたぞ、と気づくのだった。警官たちはそういう車をスタートさせたり、牽引したりで手一杯になってしまった。
解決策として、トンネルの出口に「ライトを消せ」という標識を出すことが考えられたが、夜中にライトを消す人があるかもしれない。
およそ免許をもっているほどの運転者なら、何もかもいってやらなければならないほどバカではない、彼らには「ライトついてますか?」とだけいってやれば十分なのだった。
この標識のおかげで問題は消滅した。この標識は短かったから、同じことを何カ国語かで表示することができた。
教訓;もし人々の頭の中のライトがついているなら、ちょっと思い出させてやる方が、ごちゃごちゃいうより有効なのだ。 (ワインバーグ『ライトついてますか』)