■ 『あいまい語辞典』 「から」と「ので」は違う (2006.9.4)
言葉の定義の羅列ではなく、普通の読みもののスタイルをとったユニークな辞典である。関連する話題にふれたコラムが挟まれている。あいまい(曖昧)とは、「暗くて、物事の輪郭が定かでない」こと。
あいまい語には、2つの側面があるだろう。ひとつは、言葉自身のこと。他との意味の境界がはっきりしなかったり、意味内容の確定が難しい場合。もう一つは、文脈上の側面。物事の輪郭を、どの程度明確にすべきかは、その言葉の性格とその言葉の使われる文脈によって決まるはずだ。
例えば、「大体・ほぼ・九分九厘」という言葉。いずれも、「全部ではないがほとんど」という意味で使われる。「ほぼ」は「大体」と非常に近い使い方。しかし、「ほぼ」の方がより完全に近く「九分九厘」に近いのが実際の感覚か。また、「大体」が、どの程度であるのかは場合(文脈)によって異なるだろう。場合によっては、本人が意識的に報告から重要な部分をはずし「大体」と言うときもあるし、内容を多少歪曲して「大体」のときもある。
「〜から」と「〜ので」の違いなど、「あいまい語」からは離れる感はあるが、興味深いテーマだ。「〜から」と「〜ので」は同じように因果関係を表すのだが、「〜から」の文には、主観的な判断を含む余地があり、「〜ので」にはより客観的な説明といったニュアンスがあるという。
「電車が遅れたから遅刻しました」と「電車が遅れたので遅刻しました」を比べれば
「〜から」と言われると、主観的ニュアンスが働き、遅刻を正当化されるような印象を受ける。
理科系の留学生に日本語を教えるテキストでは、「原因・理由」の表現として、「〜ため」「〜により」「〜ので」だけをとりあげているとのこと。つまり「〜から」と「〜ので」は同じように因果関係、理由/帰結関係を表すが、「〜から」の文には未確定の事柄に対する主観的な判断を含む可能性があるのに対して、「〜ので」の文にはより客観的な説明といったニュアンスがあると。
◆『あいまい語辞典』 芳賀・佐々木瑞恵・門倉正美著、東京堂出版、平成8年(1996)/6月刊
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