■ 『デジタル・ミニマリスト』 スマホに依存しない生き方 (2021.6.2)
スマホ利用者の1日の平均使用時間はおよそ3時間との調査結果がある。個人的には長時間だなと思うのだが、もうデータは古いかな。
1995年以降に生まれた世代を「i世代」と言うそうだ。物心ついた頃には、もうスマホやタブレット、インターネットが当たり前だった。
朝から晩まで休みなく何らかのデバイスをいじっているらしい。
パソコンもそうだ。ちょっと調べごとでサイトをのぞくと、ふとメッセージに誘われて隣のリンクをクリックしてしまう。
するといつの間にかネットサーフィンのワナに引き込まれダラダラと過ごしてしまう。
どうもスマホやパソコンとかのデジタルツールには、使う人をワナに引きずり込むように巧妙な仕掛けがあるようだ。
なぜこんなにも長時間ダラダラとパソコンを使ったのだろうと思う。この無駄な時間をカットできたら、本来の作業に集中できでもっと効率が上がったのに。
デジタルツールの代表は「iPhone」だろう。開発のそもそものセールスポイントは、iPodと携帯電話をひとつにすることだった。
ジョブズは「キラーアプリは電話です」と宣言していた。指で画面をスクロールするだけで電話ができる。
このiPhone(スマホ)が、数年にして私たちの生活を劇的に変えるなんて、誰も予想していなかった。
なぜ我々はあまりにも簡単にスマホの奴隷にされていったのだろう。アプリやウェブサイトは脳のメカニズムを利用して、ユーザーが誘惑に抵抗できないようにしているのだ。
脳は、決まったパターンよりも予期せぬパターンで、報酬を与えられたほうが喜びを大きく感じるという。
自分の写真や投稿に、「いいね」がつくと、ユーザーの脳内にドーパミンが分泌されるのだ。「いいね」ボタンがFacebook利用時の心理をどれほど変えたか。
デジタル・ツールの攻勢に太刀打ちするには、小ワザではできないだろう。
著者は主体性を奪還するための武器として「デジタル・ミニマリズム」を提唱する。デジタル・ツールとつきあう上で、「少ないほど豊かになれる」というポリシーで、
集中を妨げるものを仕事場から排除することだ。自分が重きを置いていることがらにプラスになるか否かを基準に、厳選したツールに絞り込むこと。
デジタル・ミニマリズムを実現するためのサポート施策を考えてみよう。
最初の提案は「一人で過ごす時間を持とう」だ。他者の思考のインプットに気をとられず、自分の思考のみと向き合う時間を取り戻そう。
リンカーンは小さなコテージで静かに考えにふける空間と時間を確保できたからこそ、南北戦争が国に残した傷を理解し、奴隷解放宣言の草案に取り組むことができた。
「スマホを置いて外に出よう」。日常生活の90%の場面でスマホは不要だろう。あればほんの少し便利という程度ではないだろうか。
スマホのない生活で心配したことは「意外なほど簡単に解決」できる。つい最近まで日常の当たり前だった孤独を経験する機会を意識的に作り出そう。
毎日長い散歩に出かけることを薦める。スマホを置いて一人きりで。
「会話を取り戻そう」。声や顔の表情といった感覚的な手がかりは人間関係を維持するために有用である。もちろんビデオチャットや電話でのおしゃべりも含まれる。
メールなどテキストメッセージは会話には勘定されない。「いいね」はしない。コメントもつけない。
「趣味を取り戻そう」。質の高い余暇活動とデジタル・ミニマリズムはつながっている。
四六時中テクノロジーにかじりつくという心理的な性向は、軽度の行為依存症と理解されるのか。
質の低いデジタルな娯楽は、想像以上に大きな影響を及ぼしている。余暇の過ごし方を改革するところから始めよう。趣味を持つこと。
「体を動かす活動を優先しよう」。質の高い余暇活動を考えるとき、手先の技術を活かした趣味をはずせない。……木板で美しいテーブルを造る、
毛糸でセーターを編む、自分でバスルームを改造する。ギターをかき鳴らして楽しい歌を歌こと、仲間とバスケットボールを楽しむことも。
プログラムを書くとか、ゲームをプレイするも効果的だ。ボードゲームはプレイによって他者とのふれあいが生まれる。
「週に何か一つ、修理するか作るかしてみよう」というテーマはどうだろう。壊れた品物を自分で修理するのは楽しいものだ。
新しいスキルを学び、それを応用して何かを修理し、学び・作ること、そしてまた修理する。この過程を繰り返すこと。
……車のオイルを交換する、シーリングライトを設置する、楽器の新しいテクニックの基礎を学ぶ、家庭菜園を始める、レコードプレーヤーのアーム調整を完璧にする等
◆ 『デジタル・ミニマリスト スマホに依存しない生き方』 カル・ニューポート著/池田真紀子訳、ハヤカワ文庫NF、2021/4
【参考】 『スマホが学力を破壊する』 ⇒こちら
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