■ 『エンデュアランス号漂流』 究極のリーダーシップ:不屈の闘志 (2011.3.25)

すでに2週間が過ぎた、東日本大震災の惨状には声もでない。郵便局に行って義捐金を送金してきたが、自分に今できるのはこれしかない。
被災地の皆さんには希望を捨てずに生き抜いてほしいと言うしかない。
本日(3/25)の朝日新聞によれば、震災後、全国の火山が活発化したという。日光白根山、焼岳、乗鞍岳、富士山、箱根山、伊豆大島、阿蘇山など13の活火山の名前が挙げてある。現在はいずれも減少傾向にあるというが、これぞ最恐怖のシナリオだ!

天災に加えて、人災事故ともいうべき原発事故が気にかかる。原子炉への放水が成功したと思うと、翌日は原因不明の爆発が起きるとか。わずかに終息への道筋が見えると、途端に希望の光が消えるような有様。状況は一進一退だ。現場の被爆事故が報じられたが、放射線の見えない恐怖のなかで、使命感をもって全力をを尽くしている作業員には頭が下がる。

震災といい、原発事故といい、まったく見通しの得られない真っ暗な状況のなか、政府でも東電でも、トップに立つ人間のリーダーシップが問われる。



こんなとき、思い出すのが『エンデュアランス号漂流』である。英国の探検家・シャクルトンが、乗務員28名を率いて、17カ月に及んだ苦難の漂流事故から奇跡的に生還した物語りだ。

シャクルトンは、南極大陸横断を目指し、エンデュアランス号で出航した。しかし南極大陸を目前にして氷塊に阻まれ身動きが取れなくなる。10ヶ月ほどの漂流。氷に押しつぶされ崩壊の危機からついに船を棄てる。

氷洋上を踏破し約500km先のエレファント島に上陸する。そこから分遣隊を率いてボートで約1300km先のサウスジョージア島に救助を求め、
さらに山脈を越えついに全隊員の救出に成功する。

現在地もわからず食糧や機材も限られた絶望的な状況のなかで、新たな危機が次々と立ちはだかる。これらを乗り越えて全員が生還したさまはとても信じがたい。

シャクルトンは絶望的な状況下において隊員の希望を失わせず、冷静な判断と決断力、不屈の闘志――で奇跡ともいえる全員帰還を成功させた。優れたリーダーとして称えられている。

南極探検の同志を募るための新聞広告が世に知られている。
「求む男子。至難の旅。僅かな報酬。極寒。暗黒の長い日々。絶えざる危険。生還の保証無し。成功の暁には名誉と賞賛を得る」

↓シャクルトンの風貌



◆『エンデュアランス号漂流』 アルフレッド・ランシング/山本光伸訳、新潮文庫、平成13(2001)年/7

    HOME      読書ノートIndex     ≪≪ 前の読書ノートへ    次の読書ノートへ ≫≫