■ フェルメールの世界にいた。ヴェルディのオペラ 《ファルスタッフ》 (2004.7.4)
新国立劇場にヴェルディのオペラ 《ファルスタッフ》 の初日に行ってきた(2004.6.25)。
シェイクスピアの『ウィンザーの陽気な女房たち』や『ヘンリー4世』に登場する騎士「フォルスタッフ」を題材にしてボイートとヴェルディが主役に色づけしたもの。
<キャスト>
ファルスタッフ:ベルント・ヴァイクル、フォード:ウラディミール・チェルノフ
フェントン:ジョン・健・ヌッツォ、医師カイウス:ハインツ・ツェドニク
バルドルフォ:中鉢聡、ピストーラ:妻屋秀和
アリーチェ(フォード夫人):スーザン・アンソニー、ナンネッタ:半田美和子
クイックリー夫人:アレクサンドリーナ・ミルチェーワ、ページ夫人メグ:増田弥生
指揮:ダン・エッティンガー、演出:ジョナサン・ミラー
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
幕が上がって舞台が現れたとたんに、これはフェルメールの世界だなと直感しました。床一面に四辺形のタイルが敷きつめられていて、これらが誇張された遠近法で、舞台の奥に焦点を結びます。部屋の作りとか 窓の様子も 17世紀のオランダ?
そして、第2幕では、窓から流れ込む太陽光の具合が、まさにフェルメールですね。おまけに、窓際にはチェンバロがあるとか、壁に掛かっている絵がぴったりの雰囲気です。舞台上の脇の人物の動きが 何かフェルメールの絵画らしいムードを醸していたのは演出なのでしょうか?第3幕は 舞台転換にもたもたしましたが 初日以降はうまく行っているのでしょうか。
ヴェルディ最晩年のオペラとしてこの《ファルスタッフ》は格別です。特別なアリアがあるわけでもないし、ライトモチーフが張り巡らされているわけでもない。アンサンブル・オペラとでもいうのか。そして聴衆におもねる姿勢が見えない。自分の書きたいオペラを書いたという、枯淡の境地か。特にオーケストラには緻密な演奏が要求される。当夜の東フィルはこの要求に応えていたと思います。
ファルスタッフの堂々とした歌唱と オーケストラがうまく解け合う。指揮者も 緩急自在で ぴったりと 歌手をバックアップする。今回の演出ではファルスタッフを、シニカルな現代人の味付けをせず、天真爛漫な騎士像ととらえているようです。滑稽さを誇張するでもなく共感がもてました。
第3幕は 失望です。歌手陣は崩壊的に感じましたが。アンサンブルや 重唱の楽しみは 初日でもあり 期待する方が無理だったのか。プロンプターまで舞台に登場する演出。「世の中はすべて冗談。人は生まれながらの道化師さ」とは最後のセリフ。
◆ フェルメールは → こちら
◆ ドラッカーと 《ファルスタッフ》 の関係 → こちら
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