■ 『インターフェース革命』 みどりの窓口には負けない (2006.7.16)
「みどりの窓口」が次々と廃止されているようだ。JR東日本では経営合理化の一環として、駅員が切符を売る体面方式から、券売機による方式に代替している。この券売機はセンターと通信回線でつながり、客はセンターのオペレーターと対話しながら、画面表示をみてタッチパネルで切符を購入する仕組みだ。買いにくくなった、サービスの低下だ、との批判が出ている(朝日新聞06.7.1)。
この券売機の例を待つまでもなく、人間の行っていたサービスを機械で置き換えるときは、使用者と機械とのやり取り・対話性など――「インターフェース」とひと言でくくれるだろう――を充分に考え抜いておく必要がある。中途半端な機械化は顧客のクレームを増すだけだ。
本書のテーマは、企業間の熾烈な競争を勝ち抜く有力な手段として、インターフェース機能を高めることが必須である、ということ。優れたインターフェースを構築するには、フロントオフィス(顧客/使用者との接点)に手を加え、機械と人間双方の能力を引き出すことが不可欠。新しい付加価値を引き出せれば顧客の拡大にもつながる。企業戦略の徹底した見直しまで要求されるわけだ。サービスにテクノロジーが導入されれば、産業革命に匹敵するほどの出来事になるだろうと言う。
確かに、いまオンライン書店のアマゾンで実現されているサービス――大規模な製品情報のデータベースと顧客情報がクロス集計されているようだ――を体験すると、革命の入口に立っているような気分ではある。これからどんなインターフェースが出てくるのだろうというワクワク感がある。
インターフェースの原型は、人間特化型、機械特化型、人間と機械の混成型の3種である。レストランのウェイター(みどりの窓口も)は、人間特化型のサービス・インターフェース。自動販売機は、機械特化型。コールセンターの従業員は、電話とデータベースシステムを使って業務をこなすから、混成型のサービス・インターフェースと位置づけられる。
機械は、単純・単調な作業を正確・精密にこなす能力に優れ、信頼性、持続性の点でもむらがない。さらに、データベースを情報源として、個別のインタラクションを仲介する能力にも長けている。人間は、予期せぬ事態への柔軟な対応に向いている。創造性、思いやりの表現、判断力でも優れている。
将来フロントオフィスの業務には、混成型のインターフェースが主流になるだろう。人間と機械のそれぞれの強みを的確に組み合わせたもの。混成型インタフェースには、シナジー効果がある。人間と機械を融合することで、サービス・インタラクションの価値を大幅に高める要素がたくさん生まれる。
◆『インターフェース革命』ジェフリー・F・レイポート/バーナード・J・ジャウォルスキー著・中瀬英樹訳、ランダムハウス講談社、2006/5
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