■ 『海馬 脳は疲れない』 やる気を起こさせるメカニズム (2004.2.20)





元気の湧いてくる本である。凡人でも脳をだますことによって、さらに能力=脳力を活性化することができるというのだ。なかでも、やる気を起こさせる脳のメカニズムには納得した。とにかく、やり始めてみるしかないってことだ。さっそく今日からでも取り組んでみよう。糸井重里との対談も刺激的で楽しい。




脳は変化したものを変化したままにしておく性質 (可塑性) がある。可塑性はすなわち記憶である。脳の中で、記憶を扱っている部位が海馬だ。人間の脳の中で最も可塑性に富んでいる。脳の奥の大切なところにあり、直径1センチ、長さは5センチ。ちょうど小指くらい。

脳には、意識するしないに関わらず、たくさんの情報が入ってくる。その情報は一度ぜんぶ海馬に送り込まれる。海馬が、「役に立つ情報」と「役に立たないから忘れていい情報」とに仕分けをする。厖大な情報の中から、ほとんどはそのまま捨てられてしまうのだが、海馬は生存のために必要な情報を記憶する。

海馬にとっていちばんの刺激になるのが、「空間の情報」。空間的な移動が海馬に刺激を与える。実際には動かなくても、頭の中で移動を想像するだけでも刺激になる。つまり、旅をするほど海馬に刺激が与えられる。

脳の「やる気」を生み出す場所が側坐核。この神経細胞が活動すればやる気が出るのだが、なかなか活動してくれない。そのかわり、一度はじめると、やっているうちに側坐核が自己興奮し、集中力が高まって気分が乗ってくる。だから、「やる気がないなぁと思っても、実際にやりはじめてみるしかない」のだ。

扁桃体や海馬をいちばん活躍させる状況は、生命の危機状況。お腹をちょっと空かせるという状態は、脳を余計に働かせる。扁桃体をいちばん活躍させる状況は、生命の危機状況です。だから、ちょっと部屋を寒くするとか、お腹をちょっと空かせるという状態は、脳を余計に働かせるのだ。

◆『海馬 脳は疲れない』 池谷裕二・糸井重里、朝日出版社、2002/6

◆池谷裕二 (いけがや・ゆうじ) 1970年生まれ。東京大学薬学部助手。98年、海馬の研究により、東京大学 大学院 薬学系研究科で薬学博士号を取得し、現職。


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