■ 『日本半導体 復権への道』 ロボティクス分野へ (2022.2.12)
日経新聞の読書欄で紹介されていた『日本半導体 復権への道』(ちくま新書)を読んだ。
著者の牧本次生さんはかつて日立の半導体部門を率いてDRAMで世界を席巻しましたね。
著者は、これからの半導体の主力市場は「自動運転車を含むロボティクス分野」になると熱く予想している。
ロボットの知能は半導体の進化とともに今後さらに発達し、「賢いロボット」の有用性が高まって応用分野が大きく広がるだろう。
日本半導体の復権はこの新市場での競争で勝てるか否かにかかっていると
いま日本の半導体産業はひどい凋落ぶり。衰退の原因を様々挙げているが 日本半導体の最大の問題点は「国内に半導体をたくさん買ってくれる企業がないこと」
さらに 国の首脳が半導体に関心を示さないという点で日本は例外的であると言う
日本半導体にとって、かつては強みであった総合電機メーカの一部門でのデパート商法という事業形態は、独立した専門店商法の形態に対して、
専門性の高さとスピードの点で勝てず、弱みへと変わっていった。1980年代までのアナログ時代には有利に働いていた要因が、
1990年代以降のデジタル時代の変化に対応できなかったのだ。30年前には世界シェアが50%だったのに、現在は10%を切るところまで落ち込んでいる。
中国の状況から目をそらすことはできない。いま中国は、パソコンやスマホなど、多くの電子機器生産の世界的存在である。
世界の半導体の4割は中国で消費されているという。半導体の設計は自国で行うものの、製造の過半はファウンダリである台湾企業(TSMCほか)に委託している。
中国は自国の発展のために先端半導体が不可欠であることを強く認識している。中国が半導体の優位性を確保する最も簡便な方法は台湾の支配権を獲得することだ。
もし台湾が香港のような状況に陥るとすれば、TSMCも中国の管理下に入る恐れがある。米国はこの地政学的リスクを強く警戒している。
◆ 『日本半導体 復権への道』 牧本次生、ちくま新書、2021年/11月
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