■ 『ビジョナリー・カンパニー』 1ページサービス〜コミュニケーションの基本 (2011.7.8)
かつて企業では、発信する書類はとにかく1ページにまとめろ、との教育をうけたものである。
"ワンページサービス"との表現だったような覚えがある。いま、この言葉をインターネットで検索してみても、
思い通りにはヒットはしない。もはや死語になっているのだろうか。
情報を集約的に重点をしぼって報告せよという要求は、緊急事態に置かれた管理者ほど強いだろう。
第二次大戦の危機のさなか、首相についたチャーチルは、政府各部局に次のようなメモを送ったという。
「書類のほとんどすべてが長すぎる。時間が無駄だし、要点をみつけるのに手間がかかる。報告書をもっと短くすること。
報告書は、要点をそれぞれ短い、歯切れのいいパラグラフにまとめて書け」。
そして、「複雑な要因の分析にもとづく報告や、統計にもとづく報告では、要因の分析や統計は付録とせよ」と。
続けて、「このような報告書は、時間をうんと節約できるし、真の要点だけを簡潔に述べる訓練は考えを明確にするにも役立つ」という。
(『理科系の作文技術』から)
プロクター・アンド・ギャンブル社 (P&G) は、アメリカを本拠とする、洗剤や化粧品などの製造販売の世界最大の一般消費財メーカーである。
マネジメントの古典書ともいえる『ビジョナリーカンパニー』には、P&Gが採用してきた社員の行動規範――厳格な服装規定、
プライバシーがほとんどないオフィス・レイアウトから、
社内のコミュニケーションの方法を標準化するよう義務付ける有名な「1ページ・メモ」などが紹介されている。
(『ビジョナリー・カンパニー』から →こちら)
「1ページ・メモ」とは、P&Gの社内ルールだ。社内のメモはすべて1ページに収め、それに添付書類をつけるよう定められているとのことだ。
このメモは、チャーチルの言うように、読む側には短時間で重要なメッセージを確認できるというメリットがある。
さらに、書く側には、メッセージを簡潔にまとめ重点を伝える訓練――自分の考えを明確にすること、にもなる。
コミュニケーションの基本だろう。もちろん、現代の電子メール時代にあっても、この基本精神は生きている。
少なくともモニターの1画面以内に、伝達すべきメッセージを収めることが要求される。ダラダラメールは良好なコミュニケーションの敵である。
◆ 『ビジョナリー・カンパニー』コリンズ/ポラス著・山岡洋一訳、日経BP出版センター、1995/9
◆ 『理科系の作文技術』木下是雄、中公新書、1981/9
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