■ 『プロジェクトマネジメント大全』 PMBOKを理解すること (2002.8.3)
みずほ銀行のシステム障害では、大規模な情報システム開発に対する、プロジェクトマネジメントの不在が指摘されている。統括責任者こそプロジェクト成功の鍵だという。日経コンピュータが挙げる、「動かないコンピュータ撲滅の十ヵ条」から、マネジメントに関するものを抜き出してみよう。
・要件定義や設計など上流工程に時間をかけ、要件の確定後はみだりに変更しない
・開発の進み具合を自社で把握できる力を身に付ける
・システムが稼働するまであきらめず、あらゆる手段を講じる。等々
プロジェクト・マネジメント (PM) とは、情報システム開発をいかにコントロールして目標どおりの成果(機能、期限、費用など)を実現するかということ。プロジェクトマネジメントの国際標準としてPMBOKが注目されている(「国際標準」との謳い文句が付けば、なんでも有り難がるのが日本人だが……)。
PMBOK (A Guide to the Project Management Body of Knowledge)は、米国の推進団体であるPMI (Project Management Institute)が提唱する、PMの標準的なフレームワーク(知識体系)とも言えるもの。おさえるべき対象を9領域としている。
@統合 (インテグレーション) 他の8つの領域をマネジメントする計画立案と実施。諸要素のバランスをとりながら、スケジュールやコスト、品質をマネジメントしていく。マネジメントする範囲は、プロジェクトの提案段階から完了、さらにプロジェクトの結果を生かす施策までのすべてを含む。顧客はもちろん、社内の他部門との調整や調達業務までマネジメントすることが明確に規定されている。Aスコープ (開発目的・範囲) Bタイム
(スケジュール) Cコスト D品質
E人的資源(要員) Fコミュニケーション
Gリスク H調達
。実際のプロジェクトではEVMS (Earned Value Management System)と称する工程管理ツールで進捗と原価などを把握する。
本書はこのPMBOKを基調として、(1)開発対象別さらに(2)対象横断的に、PM手法をまとめたもの。執筆は、NTTデータとか日立、NECなどのITベンダーのプロ35人であるが、日本IBMからは11人と飛び抜けている。本来PMBOKは情報システム開発だけではなく、建設などを含めてエンジニアリング全般に適用されるものとのこと。
◆ 『プロジェクトマネジメント大全』 プロジェクトマネジメント学会・日経コンピュータ共同編集、日経BP社、2002/7
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