■ 『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』 身近かな話題から会計学入門 (2005.4.23)
なかなかアイデアを凝縮した本である。身近な疑問からスタートして、そこから会計学――会社の決算に出てくる数字の理解――にまで発展させようというもくろみ。そして、著者はこの会計学が日常の生活にも役立つはずだと言う。
住宅街を軽トラックで売り回る「さおだけ屋」はちゃんと商売として成り立っているのだろうか?そもそも、さおだけの需要がそんなにあるとは思えないし、わざわざ、さおだけ屋から購入するだけのメリットがあるのか。さおだけ屋だって商売のはず。利益をどうやって出しているのだろう。売り上げを増やすか、費用を減らすか、2つの方法しかないないだろう。
売り上げを増やすということは、日常生活に展開すれば、新しい仕事に就くこともひとつの方法だ。しかしこれは努力とかなりの運を必要とする。てっとり早く利益を出すには、費用を減らすこと。いわゆる「ケチ」に徹することだ。著者は、ケチは「利益を出す」という会計目的に対して、もっとも合理的に行動している人間なのだと言う。
ここから引き出されるノウハウはこうだ。節約はパーセントで考えないで、絶対額で考えること。1000円のモノを500円で買うよりも、101万円のモノを100万円で買うこと。とくに情報源がかたよっている場合には、本当の費用対効果がわからない。
この身近なエピソードを積み上げる著者の作戦は成功していると思う。自然食品店の話題が、在庫と資金繰りにつながるとか。「完売したのに怒られた!」の機会損失と決算書の話題も面白い。商売の基本は、チャンスゲイン (売り上げ機会の獲得) であると。
数字のセンスが必要だという。全日空のやった「50人にひとりが無料 キャッシュバック・キャンペーン」というのもよく数字を見なければいけない。「50人にひとり無料」は「2%割引」と同じなのだ。冷静になって計算してみると、たいして得ではないことを別の表現でいっているに過ぎない。「無料」というインパクトに惑わされずに、物事をキチンと数字で考えることができるかどうか、それが数字のセンスだと。
◆ 『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?身近な疑問からはじめる会計学』 山田真哉著、光文社新書、2005/2
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