■ 『シェーカーへの旅』 祈りが生んだ生活とデザイン (2011.10.16)




シェーカーとはキリスト教の一派。クェーカーの流れをくみ、反権力、絶対的平和主義をかかげている。イギリスのマンチェスター生まれのアン・リーを教祖とする。1774年には、新大陸アメリカでの布教を始める。東部一帯に多くの信徒を獲得し、19世紀中頃には最盛期をむかえるが、その後衰退し1938年には歴史を閉じる。


シェーカー信徒は集団生活のなかで、暮らしに必要な家具を自ら作った。さらに外部への販売用に大規模な生産を始め、教団の最盛期には独創的な家具様式が確立した。そして、木工品類の優雅な美しさから、"シェーカー家具"として知られるようになる。

著者は1980年代中頃からシェーカー家具の復元の仕事を進めるためにアメリカを頻繁に訪れるようになったそうだ。本書はオリジナルのシェーカー家具を訪ねる旅の記録を縦糸に、シェーカーの案内を横糸に、構成されている。初めて、"シェーカー家具"の名前を聞くものに、その魅力をたっぷりと伝えてくれる。

「シェーカー家具の優れたデザインは、精神的な姿勢から生まれたものである」と言われる。シェーカーのクラフツマンは、祈りとして仕事に取り組んだのだ。不必要なものの排除がシェーカーの大きな原則だった。無意味な装飾、奇をてらったものをきらった。「シェーカーの家具は、世俗的装飾を拒み、結果として簡素なデザインに至った。バランスのとれた構造とプロモーションを持っている」と。



シェーカー家具の中で、イスの類が最もよく様式を表している。4本の丸棒の脚と貫、それにスラットと呼ばれる背板で構成される。部材は極端に細く薄い。後脚の丸棒は最上部では直径1インチほどだ。背板は厚さが1センチにも満たない。

細く薄い材料でイスに要求される強度を満たすには、それぞれの仕口に入念な加工が求められる。さらに材料の吟味が必要だ。ハード・メープル材が使われている。

シェーカー家具の魅力は、木の素材感とデザインの妙味である。明るく優雅な雰囲気は、北欧の近代家具に大きな影響を与えたといわれる。



◆『シェーカーへの旅 祈りが生んだ生活とデザイン』 藤門弘、平凡社ライブラリー、2000/8

<追記> 自分でシェーカー家具を組みたてるキットが、SHAKER JAPANから販売されている →こちら

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