■ 『ぼくの血となり肉となった500冊そして血にも肉にもならなかった100冊』
立花隆 (2007.2.12)
例によって該博な知識と驚くばかりの読書量。猛勉強ぶりをここまで披瀝されるとちょっと腰が引けてしまう。
第1部は、ネコビルの中を編集者と2人で回遊しながら、目についた書棚の前で、本を紹介する。立花隆の執筆スタイルは、あるテーマの執筆に際しては、まず書店で目にした資料本を目につく限り買い込む――ベーシックなものから最新刊まで、ほとんど棚いっぱいの分量だ。それを読み込んでから執筆を始めるそうだ。本が満杯なのは納得できる。蔵書はネコビルを埋め尽くして、今や近隣のアパートまで借りているとのこと。それに対象領域がとてつもなく幅広い。赤塚不二夫の『もー列ア太郎』もあるんだから。
最後に、フランシス・ベーコンのこんな言葉を紹介してしめくくる。「味わいつつ食べるべき本もあれば、手っ取り早く呑み込んでしまえば十分という本もある。そして、少数ながら、くちゃくちゃよく噛んで、ちゃんと消化すべき本もある」
後半 第2部は、週刊文春に連載された「私の読書日記」(2001.3〜2006.11)。こちらにも アレレ?そうなんだ!と思う本が続出する。2001 年当時の、財政危機がらみの時事ネタ本がかなりあるが、残念ながら賞味期限切れか、あの財政危機も今やどこかに飛んでしまったようだ。
それと、脳科学関連が多くないかという印象。「私も還暦をすぎて、脳機能が明らかに退化しつつあることを日々実感している」などの立花隆の言葉もあり、『痴呆の症候学』を紹介している。
『ゲーム脳の恐怖』(森昭雄著)の紹介はこうだ。若者がテレビゲームのやり過ぎで、脳機能が退化しているそうだ。前頭葉の前頭前野という部分の機能がおとろえている。すぐ切れる、羞恥心がない、生きる意欲がない、等々はこれで説明できるという。テレビゲーム中の脳波のパターンは、痴呆症の老人と同じだというからビックリ。
◆『ぼくの血となり肉となった500冊そして血にも肉にもならなかった100冊』
立花隆著、文藝春秋、2007/1
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