■ 『定年と読書』 晴耕雨読のすすめ (2011.4.3)




本文に引用されているのだが、ユニークな解釈で知られる「新明解国語辞典」(三省堂)によれば、
晴耕雨読は「(都会を避けて悠々自適する読書人の生活の意)晴れた日は耕作し、雨の日は読書すること」とのことだ。
ことさらに、「都会を避けて……」との注記が加わっているのが意味深い。


たしかに「晴耕雨読」は本書のテーマだろう。著者=鷲田小彌太の文章テクニックのせいか、本書はスイスイと読めてしまうので、うっかりするとメッセージを読み過ごしてしまったかも。
高齢化社会への提案メッセージだ。高齢者が元気に生きること。そのためには、まず体の元気=健康の問題がある。同時にマインドの元気が必要だ。
著者は、心の元気の栄養源は「読書」にあるという。

定年後の新しい人生設計を立てること。毎日の生活のなかに読書をきちんと繰り込むことだと言う。定年後の読書生活を阻む大きな要因は十分な時間があるということ。時間は十分確保できるのに、その余裕に見合う読書欲がわかないということだ。

定年後こそ、読書欲を喚起させるためにも、本を買う必要があるのだ。若いときのように、むやみやたらに買う必要はないかもしれない。
しかし、本の購買欲は読書欲そのもの。本に限らず、購買欲がなくなったら、そうとうに老化した、と思っていいだろう。

終わりに著者からの提案はこうだ。定年後の知的な生活のなかに、著書を書くことを、意識的に位置づけろという、――これはなかなかレベルの高い課題だと思うが。そうすることで、関連の本を集めたり、読んだりするのに力が入る。漫然と読書するのではなく、仕事の必要があって読み、咀嚼し、利用しなければならない読書と、同じである。


◆ 『定年と読書 知的生き方をめざす発想と方法』鷲田小彌太、文芸社文庫、2011/2(オリジナルは2002/6刊)

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