■ 『地球の歴史』 水惑星の誕生 われわれはどこから来たのか (2023-5-8)
「地球の歴史」について、これまでで最もワクワク感をもって読み進んだ本である。地球の誕生から「生命の歴史」とのダイナミックな連関が述べられる。そして人類の進む道は、地球温暖化はどなるのだろう?地球の歴史を概括するのに、新書3冊はちょうどよいボリュームと感じる。刊行は2016年であるが本書の鮮度はまだまだ落ちていない。
138億年前のビッグバンで宇宙が誕生した。銀河系や太陽系、そして地球が分化する。灼熱のマグマの海だった地球は、マグマの冷却や大陸の分裂・合体を繰り返しながら、厚い大気の層と穏やかな海を持った。地球の歴史は46億年、この間に起きた現象はきわめて多岐にわたる。複雑な全体像を明らかにするためには、物理学、化学、数学、生物学等々の総動員が必要だ。さらに、20世紀に入ると地球科学は大きく進展する。「プレート・テクトニクス」理論の出現だ。大陸の歴史が見直されることになった。
地球誕生のとき、熱い地球を取り巻いていた水蒸気が冷え雨となって地上に降り注いだ。大量の水はやがて海となる。そのわずか2億年後(38億年前)には海で生命が誕生する。地球は太陽系の数ある惑星のなかで唯一環境が安定した「水惑星」である。生命が生まれ、進化を遂げることができた所以だ。
ハビタブル・ゾーンという言葉がある。生命居住可能領域とも言われる。宇宙のなかで生命を維持できる環境 ――水が液体の状態でいられる範囲のことを指す。大量の水を蓄えた海こそが生命の維持に必要な温度と安定した環境を提供してくれる。太陽系の惑星のなかでも地球は特異的に水の豊富な水惑星である。地球の表面の7割が海が占めている。地球の誕生以来さまざまな偶然が重なって液体の水が生産され、現在まで保持されてきたのだ。
地球は太陽から46億年のあいだ絶えず放射エネルギーを受け取ってきた。地球内部では岩石中をゆっくりと熱が移動している。さらに対流によるエネルギーの移動もある。物質が冷えることにより、多様な変化を繰り返しながら化学的な成層構造がだんだんとできた。地球がまだら状に冷えていった分化のプロセスが結果的に地球上に多種多様な環境を生んだ。海で生まれた小さな生命は、光合成、呼吸、多細胞化、有性生殖といったさまざまな仕組みを獲得し、ついには重力や乾燥した大気をも克服して陸上に進出する。
地球の歴史には何回も生物絶滅の危機があった。超大陸の分裂と超巨大噴火によって95%もの生物が絶滅したとき。生き残った生物が進化を遂げて中生代は恐竜の時代となる。そして、6500万年ほど前には巨大な隕石が地球に衝突し環境を激変させる。地表に跋扈していた恐竜たちが絶滅しほとんどの生物が絶滅する。次の新生代は哺乳類の時代であり、やがて人類が誕生するのだ。
いま世界で問題となっている地球温暖化についても、さまざまな複合的要因が想定されるようである。産業革命以後に人類の産業活動によって大量の二酸化炭素が放出されたのは事実である。ところが、地球システム全体のなかでは炭素が循環、移動、拡散するほうがはるかに大きいのだ。火山噴火は大きく炭素循環に関与している。活火山からは日々火山ガスとして大量の二酸化炭素が放出されている。現在の大気中に存在する二酸化炭素の量は、世界中の1500個ほどの活火山から約1万年間に排出された二酸化炭素の総量と等しいという。
温暖化問題も地球全体の長い時間軸で見ると、再び氷河時代に向かうなかでの一時的な温暖化と言える。地球史では現在の二酸化炭素濃度は寒冷期にあたる非常に低い水準にある。氷河時代があった石炭紀(約3億年前)の大気中の二酸化炭素の濃度は、現在と同じような低いレベルだった。
温暖化は過去の太陽の活動とも関係する。過去400年間の太陽黒点数と平均気温を比較してみると、太陽の活動が活発化するにつれて、地球の平均気温が上昇したことがわかる。太陽黒点の増減は太陽表面での活動の強弱を表している。黒点数が極大になる時期には太陽からの放射エネルギー量が0.1パーセント増える――太陽活動の11年周期と言われるものだ。地球の気温は過去30年のあいだに3度ほど上昇してきたが、原因は太陽の周期活動にあるのだ。
◆『地球の歴史(上) 水惑星の誕生』鎌田浩毅、中公新書、2016/10
◆『地球の歴史(中) 生命の誕生』鎌田浩毅、中公新書、2016/10
◆『地球の歴史(下) 人類の台頭』鎌田浩毅、中公新書、2016/10
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