■ 『帳簿の世界史』 未来の資産価値を現在に置きかえる帳簿 (2015.9.18)
本書の目次を以下に掲げる
序章 ルイ16世はなぜ断頭台へ送られたのか
第1章 帳簿はいかにして生まれたのか 奴隷が帳簿係を務めたアテネ、ハンムラビ法典で会計原則が定められていたバビロニア、歴代の皇帝が帳簿を公開したローマ帝国。だが古代の会計は不正に満ちていた。それはいかに進化し、複式簿記の発明へ至ったのか。
第2章 イタリア商人の「富と罰」 教会法で金貸業が禁じられていた14世紀のイタリアでは、商人と銀行家は常に罪の意識に苛まれていた。だが、最後の審判を恐れるその信仰心こそが、会計を発展させたのだ。彼らの秘密帳簿は、それを示している。
第3章 新プラトン主義に破れたメディチ家 ルネサンス期のフィレンツェを支配していたメディチ家。ヨーロッパ最大の富豪を支えた会計技術は、なぜ一世代で失われてしまったのか。その謎を解く鍵は、新プラトン主義によるエリート思想の流行にあった。
第4章 「太陽の沈まぬ国」が沈むとき 16世紀になっても会計への偏見は根強かった。だが、スペインは赤字続きの植民地を前に、遂に会計改革に乗り出す。重責を担ったフェリペ2世だったが、オランダの反乱・無敵艦隊の敗北など、さらなる悪夢が彼を襲う。
第5章 オランダ黄金時代を作った複式簿記 東インド会社を中心とした世界貿易で途方もない富を得たオランダ。その繁栄の秘密は、複式簿記にあった。国の統治者が史上初めて複式簿記を学び、それを政権運営に取り入れることができたのは、一体なぜなのか。
第6章 ブルボン朝最盛期をを築いた冷酷な会計顧問 ヴェルサイユ宮殿を建設したルイ14世を支えたのは、会計顧問のコルベールだった。財政再建に奮闘したその手腕はアダム・スミスにも称讃されたが、同時に彼は会計の力で政権を容赦なく破滅へと追い込んだ。
第7章 英国首相ウォルポールの裏金工作 スペイン継承戦争の巨額債務や南海泡沫事件など、イギリスの財政危機を何度も救ったウォルポール。だが彼の権力と財産は、国家財政の秘密主義なくしては得られず、その長期政権も裏金工作によって支えられていた。
第8章 名門ウェッジウッドを生んだ帳簿分析 イギリス史上最も成功した陶磁器メーカーの創立者・ウェッジウッド。彼は経営に確率の概念を取り込み、緻密な原価計算を行うことで会社を繁栄させた。この時代、富は信心と几帳面な会計の産物だとみなされていた。
第9章 フランス絶対王政を丸裸にした財務長官 ルイ16世から財務長官に任命されたスイスの銀行家・ネッケルは、それまで秘密のベールに包まれていた国家財政を、国民へ開示した。そのあまりにも偏った予算配分に国民たちは怒り、フランス革命が起きた。
第10章 会計の力を駆使したアメリカ建国の父たち 「権力とは財布を握っていることだ」。アメリカ建国の父たちの一人、ハミルトンはこう喝破した。複式簿記を郵政会計に導入したフランクリン、奴隷も個人帳簿に計上したジェファーソン。彼らはみな会計の力を信じた。
第11章 鉄道が生んだ公認会計士 鉄道の登場により、財務会計の世界は急速に複雑化した。鉄道会社は巨大企業へと成長するが、粉飾決算が横行。その監督のために公認会計士が誕生することになる。彼らは、規制がなく野放し状態のアメリカで奮闘した。
第12章 「クリスマス・キャロル」に描かれた会計の二面性 19世紀から20世紀にかけて、会計は小説や思想にどのような影響を与えたのか。父親が会計士だったディケンズ、複式簿記の発想が『種の起源』に見られるダーウィン、会計を忌避したヒトラーから見えてくるものとは。
第13章 大恐慌とリーマン・ショックはなぜ防げなかったのか 複雑化した会計は、もはや専門教育を受けた人でなければ扱えない。その中で大手会計事務所は、監査で知り得た財務情報をもとにコンサルティング業を開始する。明らかな構造的矛盾のもと、最悪の日は近づいていた。
終章 経済破綻は世界の金融システムに組み込まれている
◆ 『帳簿の世界史』(The Reckoning) ジェイコブ・ソール/村井章子訳、文藝春秋、2015/4
◆ 表紙カバー:マリヌス・ファイン・レイメルスワーレ『2人の収税人』(1540年)
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