■ 『天才アラーキー 写真ノ方法』 (2001.6.24)
アラーキーの写真は過激である。何枚ものヘア丸出し写真で名を馳せている。しかし、この新書の見開き2ページ(P.74、75)の写真を見て欲しい。親子4代の散歩とでも言うのであろうか。東京の下町・谷中あたりを歩いていて撮ったものらしい。
実にいい写真だ。懐かしさ、小さなものへの愛情、母のまなざし、乳母車を押す様。ゆったりした午後の陽射し、カメラマンを受け入れている自然な笑顔。公園の片隅。水平・直角を無視したフレーミングさえ心にしみ込んでくる。この本を紹介するのにこれ以上の写真はいらない。
この本は初めから終わりまで、順序よく目次に従って読むものでもないようだ。適当にぱらっと広げたページから読めばいいのだ。そんな人はいないはずだが、手取り足取りの写真術を期待してはいけない。
「写真っつーのはさ、生きることなんだよね」。抜き書きを並べるしか、この本を紹介する手だてはない。
・写真は一種のインタビューだ。相手から何を引っぱり出すか。
・そんときの気持ちとか心、そんときのモノやコトにピントを合わせることが大切。
・動くことなんだね、写真撮るっつうのは。動かないとダメ。
・人に好かれる、親近感を持たれるっていうのは、実は写真家になるための最大の要素かもしれないなー。
・視線はまっすぐが私の基本。特にね、見おろしちゃいけない。
◆『天才アラーキー 写真ノ方法』荒木経惟、集英社新書、2001/5
◆荒木経惟(あらき・のぶよし) 1940年、東京府下谷区(現・台東区)三ノ輪生まれ。写真家。都立上野高校、千葉大学工学部写真学科卒業。63年にカメラマンとして電通に入社し、72年に退社するまで9年間勤務。著書:『さっちん』『東京は、秋』『写真私情主義』『人町』。海外での評価も高く、ウィーン、フィレンツェなどでの大規模な個展はセンセーションを巻き起こしている。
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