分析の対象は市場とか、顧客とか、商品の販売実績などである。経営判断や経営戦略の策定に結びつけること。体系的にまとまっており、豊富な図もあって分かりやすい。用語を始めとしてマッキンゼー・スタイルとでも言うべきか。
「何のために」分析をするかといえば、著者は、「正しい認識・判断」により「正しい対応」をするため、と言う。世の中の事象・現象は、いろいろな要素が輻輳、生成の過程や因果関係が複雑に入り組んでいる場合が多い。表面の事象だけを見ていたのでは判断を誤り、誤った対応・行動を招く危険性があるのだ。
分析の基本は、「大きさを考える」、「分けて考える」、「比較して考える」、「時系列を考える」の4つであるという。もちろん、これらを単独に適用するのではなく総合的に考えることではあるが。
(1) 大きさを考える
全体としての大きさ、施策の利きの程度をおおまかに把握して、そのうえで重要度に応じて、あるいは大きなところのみ手をつける、という考え方。ここで出てくるのが「80対20の法則」 (パレートの法則とも言いますね)。たとえば、100種類の商品を売る店があったとする。おそらく売れ筋の上位20品目で、全売上高の約80%を占める、というもの。計画を立てたり、施策を打ったりする際には、まず上位20品目に注目して検討すること。
もう一つ、クリティカル・マスという考え。成果を上げるためにある一定量を超える資源投入が必要な場合、その必要量をクリティカル・マスと呼ぶ。兵法でも、「戦力の逐次投入はもっとも忌むべきこと」とされている。クリティカル・マスを超えた集中投入が成功の鍵。
(2) 分けて考える
個々の要素を吟味し本質を正しくとらえること。このための、基本原則がMECE
(ミースィー)。Mutually=要素が互いに、Exclusive=重複がなく、Collectively=集めると、Exhaustive=全体を尽くす、この4つの単語の頭文字をとったもの。マッキンゼー社が作った用語とのこと。
一つのものを二つ以上に「分ける」際、分けられた諸要素は互いに重複がなく、かつそれらを合計すると、元の分ける前の全体を漏れなく尽くしていなければならない、と。切り口の軸を明確に意識し、その軸の上で全体の100%をカバーするか否かを考えることが重要である。
(3) 比較して考える
二つ以上の事象を比較検討することにより、そのなかに含まれる法則性や相互作用、重要性を判別することができる。比較のための基本姿勢は、アップル・ツー・アップル。意味ある比較ができるか否かということ。同じリンゴ同士なら大きさ・色・形・味などを対等な条件で比較し優劣をつけられる。比較の項目の選び方そのものに、選んだ人の主観が当然反映されるので、その選び方の考え方に、MECEへの取り組みが必須である。
(4) 変化/時系列を考える
大きな流れ、変化を読むこと。トレンドを見る際には、正しい判断のために、基点の取り方や期間の定め方が重要である。季節変動を修正することも必要。繰り返し現れる変化のパターンを読むこと。そして、変曲点(微分で考えた場合の変化率)に着目し、兆候を読みとること。また、時系列でものを見るときに、まず最初に考えるのは「対前年比伸び率」であるが、必然的に「比較して考える」を含んでいる。
◆『意志決定のための「分析の技術」』 後正武著、ダイヤモンド社、1998/12
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