■ 『 i モード事件』 i はインタラクティブ、インターネットそして私 (2002.7.14)
松永真理が、20年つとめたリクルートを辞めてドコモに転職したのは、i
モードという新しいサービスを開発するため。コンテンツの開発をやって欲しいと言われて移ったとき、明確なビジョンがあったわけではない。これならいけそうだという確信があったわけでもない。
新しいメディアを立ち上げるという話に、面白そうじゃないと感じたに過ぎなかった。携帯電話の小さな液晶画面にインターネットの情報を流すことだ。
アマゾンは創立者ペゾスの強烈なリーダシップと明確なポリシーによって率いられた。一方、松永は、iモード開発のチーム編成を、黒澤明の『七人の侍』にたとえる。対照的ではないか。新しい事態に臨むとき、まず必要なのは人材を集めることだと。松永は自分の役割を千秋実演じる平八に例える。剣の腕より薪割りのうまさでスカウトされた。「腕のほうは頼りにならぬが、明るいのが取り柄、苦しいときには重宝だと思う」。
さらに、アマゾンとまったく違うのは、i モードのコンテンツ開発にはパートナー企業との二人三脚が必須だったこと。開発者の夏目は言う、「企業と僕ら新規事業を開拓している人間は、同じ泥船に乗っているんだよね。どちらが漕ぐのを止めたとき、船は沈んでしまう。でも両方が一生懸命に漕げば、大きなメディアに育っていくんだよ」。
◆『i モード事件』松永真理著、角川書店、平成12年(2000)/7
◆松永真理 (まつなが・まり) 1954年生まれ。明治大学文学部卒、リクルートに入社。「就職ジャーナル」「トラバーユ」編集長等を歴任。97年NTTドコモ・ゲートウェイビジネス部企画室長に就任、iモードコンテンツの開発に当たる。ウーマン・オブ・ザ・イヤー(「日経ウーマン」主催)受賞。2000年3月退社後、現在はNTTドコモのアドバイザーを務める。政府税制調査会委員。2000年9月、女性サイトを立ち上げる。
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