■ 『「広辞苑」は信頼できるか』 今は電子辞書の時代だが (2000.9.16)
「広辞苑にこう書いてあります」と言って、広辞苑を唯一の拠り所に論陣を張る人がよくいる。それほど広辞苑は信頼できるのであろうか。この疑問にこの本は答えてくれる。著者は元読売新聞のヴェテラン校閲マン。
第1部は、どんな辞書がつかいやすいか。第2部は辞書別ランキングである。
現在入手できる国語辞書21冊を俎上に載せている。全20巻の日本国語大辞典のような本当の大辞典から、「恋人」の定義で話題になった新明解国語辞典のような小型辞書まで。これらの辞書ひとつ一つについて、特徴を紹介し長所・短所などを明らかにしている。
また百項目についてチェックして採点結果を示している。主な評価基準は、@語義の説明、扱いは正確で落ちがないか A引きやすく、扱いやすいか
B誤りやすい語句などの扱いは適切か 等である。現代の新聞・雑誌・書籍を読み、現代の文章を書くために必要と思われる項目を選んだとのこと。
数字だけを取り上げるのは著者の本意ではないかもしれないが、採点結果を見ると。広辞苑は52.5点で第4位である。第1位は、三省堂国語辞典 61.5点、2位は大辞林 (三省堂) で 59.0点。3位は大辞泉 (小学館) の57.5点である。もちろん、万人を満足させる公平な採点ができるはずはない。すぐに出てくる疑問は、
・編集方針がまったく異なる大辞典と小辞典を一律に評価できるか
・評価基準としている言葉はどのように抽出したのか根拠が不明である
等々。
著者は「おわりに」で、一つの客観的な品定めの材料を提供できたとし、項目の選び方によって評価は全く違ってくると言っている。あらゆる目的に対応できる万能辞書はないというのが結論だろうか。一冊の辞書に書き尽くせるほど日本語の底は浅くないのだ。
それにしても、21冊の辞書を読み比べる作業は大変な手間がかかったはず。4年余を要したとのことだ。三省堂新明解国語辞典では「ごきぶり」に、「さわると臭い」とあるのを初めて知った。ちなみに、この個性的な新明解は46.5点。これからも愛用します。
◆『「広辞苑」は信頼できるか 国語辞典100項目のチェックランキング』 金武伸弥著、講談社、2000/7
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