■ 『日本語のうまい人は英語もうまい』 まず日本語から (2003.3.23)
小中学校時代を振り返ってみると、国語の好きな女の子はテストが満点だったし、英語も点数が良かった。確かに、日本語のうまい人は英語もうまい、と納得する。しかし、本書を読み進むと、どうもそんな単純な話ではないようである。現今の英語中心のインターネット時代に乗り遅れるな、と中高年を叱咤激励しているかもしれない。英語コンプレックス解消の具体策を教示しようとの意気込みが感じられる。
しかし、そんなに力んで読む必要もないようである。「ちゃんと通じる日本語の話せる人は、かならず上手に英語も話せる」と。ここで「ちゃんと」と「上手に」という表現は、決して「正確に」とか「流暢に」という意味ではない、強いていえば、「それなりに」「当たらずといえども遠からず」という程度の意味だというのだ。
本書の内容は、ちゃんと言えば、日本語−英語圏の文明比較論なのである。英語はダシ、刺身のツマかも。日本文化を理解し、日本語をもっと勉強して上手になりましょうと。そして、著者の語り口――巧まざるユーモア――を楽しむのが最良の読書法である。例えば、英王室のエジンバラ公と、ブロークン・イングリッシュで渡り合った武勇伝などコミュニケーションの本質を教えてくれる。
英語習得の具体的方法論として挙げられているのは、「キーワード式会話術」と称するものである。要は意志の疎通ができればいいのだ。肝腎なのは、キーワードを正確に伝えることなのだ。構文はイロハだけを心得ていれば充分なのだ。重要なことは、意志疎通をしたい内容が、「母国語の構文で保証されていること」であり、これさえ確立されていれば、キーワードの提示で、かなり通用するものだという。
ほとんどのページで、「日本語のうまい人は英語もうまい」と繰り返される。確信犯的であり、しつこいな、との感もある。あたかも潜在意識を活用した「サブミナル広告」を思い出させる。知らず知らずのうちに、日本語教育の大切さを刷り込む戦術か。
◆『日本語のうまい人は英語もうまい』角行之、講談社+α新書、2003/3
◆角行之 (かど・つらゆき) 1940年生まれ。学習院大学理学部物理学科を卒業後、日立製作所情報・通信グループに勤務。20年間SEとして勤務したあと、日立グループのSE2万6000人の技術教育責任者となり、コスト・パフォーマンスの高いシステムを顧客に正確に伝達する表現方法を教える。
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