■ 『ピープルウエア 第2版』 プロジェクト成功の鍵は何か? (2002.2.17)



かつて「ピープルウエア」という言葉に新鮮な響きを感じたものだ。既に12年前である。いま第2版を手にして読み直してみると、世の中はドッグイヤーを標榜する性急な時代に変わったものの、「ピープルウエア」の原則は不変であるとの感が強い。ソフトウエアプロジェクト開発で技術面だけに関心を偏らせてはいけない、と言うのである。

著者デマルコによれば、1977年当時の開発プロジェクト500以上のデータから、調査したプロジェクトの約15%が失敗しているとのこと。25人以上を注ぎ込んだプロジェクトのうち、25%が未完成に終わった。原因は単なる技術的問題ではなく、社会学的なものであると。この状況は、いまも実感として変わっていない。むしろプロジェクトの失敗では深刻な事例を見聞きする機会が増えたようだ。

プロジェクトの成功は緊密な対人関係から生まれると、本書は主張する。失敗は対人関係が疎遠であるという結果なのだ。

成功の手がかりはどこにあるのだろう。第1部 人材の活用。管理者のプロジェクトへの取り組み方に言及している。とかく、人を交換可能な部品として扱ってしまう危険があるという。部下にプレッシャーをかけるだけでは、うまくいかない。管理者の役割は、人を働かせることではなくて、人を働く気にさせることである。

第2部では諸悪の根源としてオフィス環境に言及している。企業におけるプログラマーの能力差は10倍であるといわれている。
しかし、企業自体の生産性にも10倍の開きがある。オフィス環境の善し悪しがプログラマーの生産性に大きく影響するというのだ。オフィスの設備投資をケチったところで、浮いた金額は生産性低下の危険性に比べれが微々たるものであると。

次の6項目は、健全な会社にするための不思議な作用を生み出す戦略的要素だという。いい加減な製品を納入することからは、チームを一体化させる力は生まれない。結束したチームは、人を生産的にし目的意識を高くする効果がある。

品質至上主義を作り出す
・打上げ式をたくさん用意する
・エリート意識を醸成する
・チームに異分子を混ぜる
・成功チームは解散させない
・戦術でなく戦略を与える


◆『ピープルウエア 第2版 ヤル気こそプロジェクト成功の鍵』
トム・デマルコ、ティモシー・リスター著、松原友夫・山浦恒央訳、日経BP社、2001/11

トム・デマルコ (Tom DeMarco)、ティモシー・リスター (Timothy Lister)
ニューヨークとロンドンに拠点を置くコンサルタント会社、アトランティック・システム・ギルド社の共同経営者。1979年以来、生産性管理、プロジェクト管理、企業文化などに関する講演や執筆、コンサルティングを国際的に行う。



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