■ 『企業参謀』 戦略的思考とは何か (2000.3.26)


大前研一の『新装版 企業参謀』(プレジデント社、1999)は、既刊の『企業参謀』正・続とプレジデント誌に寄稿した「先見術」を収録したものである。大前研一が『企業参謀』を書いたのは25年前の32歳のとき、マッキンゼーに入社してまだ3年目の新人だった。実質的な処女作であったという。さすがに、文章にはやや生硬さが見られるが、「戦略を持て」と繰り返すパワフルな語り口は大前研一に変わりない。

『企業参謀』は今や古典だろうか。経営者の教科書であろう。もう一つの教科書として『ジャック・ウェルチのGE革命』(東洋経済新報社、1994)を忘れることができない。強烈な指導力をもったカリスマ経営者が目指すのは、『企業参謀』が指し示す目標地点と同じものと思われる。

T部が「戦略的思考とはなにか」で既刊の『企業参謀』そのままである。
戦略的思考入門、U企業における戦略的思考、と別れている。Vは戦略的思考法の国政への応用。Wは戦略的思考を阻害するもの。

最初に、T戦略的思考入門では「戦略的思考とは、事象を分析し組み立て攻勢に転じるやり方」、と説く。ものの本質に基づいてバラバラにしたうえでそれぞれの持つ意味あいを最も有利となるように組み立てる。本質をとらえる手法として、解決志向型の設問をすること。漫然とした改善策を拾うような設問でなく、解決策につながるような設問のしかたを常に訓練しすることが重要である。次に、成功の尺度を与えること、同業他社と比較するなどして売上高利益率とか総資産利益率を。

そして、U企業における戦略的思考では、企業における「中期経営戦略計画」の重要性を強調する。大体3年をメドとすること。立案・遂行にトップの主勢力を向けなければいけない。

中期経営戦略計画のステップ
(1)目標値の設定 現実的願望の定量化
(2)基本ケースの確立 説明変数の仮定
(3)原価低減改善ケースの算定
(4)市場・販売改善ケースの算定
(5)戦略的ギャップの算定
(6)戦略的代替案の摘出 抜本的戦略案←→リスクの発散
(7)代替案の評価・選定 定量的な評価による
(8)中期経営戦略実行計画 単に寄せ集めたのではダメ

製品系列のPPM(ポートフォリオ)管理を行うこと。

最後に、W戦略的思考を阻害するもの、では全編を貫く一般論として5つの戒め(参謀五戒)をまとめている。

参謀五戒
(1)「イフ」に対する本能的恐れを捨てよ(代替案を常に理解)
(2)完全主義を捨てよ(ほんの1枚上をタイミング良く)
(3)KFSに徹底的に挑戦せよ、常にKFSを忘れない(Key Factors for Success)
(4)制約条件に制約されるな 「何ができないか?」ではなく 「何ができるか?」と考える
(5)記憶に頼らず分析を(「分析力」と「概念をつくり出す力」)。


◆ 『[新装版]企業参謀 戦略的思考とはなにか』 大前研一著、プレジデント社、1999/11


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