■ 司馬遼太郎とワープロ (2000.2.26)
まことに小さな国が、開化期をむかえようとしている。
その列島のなかの一つの島が四国であり、四国は、讃岐、阿波、土佐、伊予にわかれている。伊予の首邑は松山。
こうして『坂の上の雲』は始まる。壮大なドラマの幕開けにふさわしい風景。
「司馬遼太郎が愛した世界」展に行って来ました。(2000.2.11 横浜高島屋)
もちろん坂本竜馬の資料もあったのですが、興味深かったのは自筆原稿です。特注の原稿用紙に太めの万年筆で書かれています。
複数色の蛍光ペンを駆使して、文章を修正し推敲を繰り返しています。3色までは確認したのですが、書き替えたり、新しい段落を挿入したり、前後を入れ換えたり、そのために色を使い分けているようです。完全に削除すると決めた文章は真っ黒に塗りつぶします。展示されていた原稿は、章の書き出しとか頭の部分だったので、イメージを創出するために、一層の推敲を繰り返したのでしょう。あの流麗な文章が出来上がる過程があからさまになっています。
ワープロを使えば推敲は格段に楽、とは素人の意見。当然、司馬遼太郎はワープロを知っていたはずですが、自らキーボートを打つなんてひとつも考えたことはなかったでしょうね。ワープロを使うと文体が変わるという意見があります。これを実験したテレビ番組があったようです。学生を対象に、一つのテーマを与えて手書きとワープロの両方で書かせて、文体を解析し差があるかどうかを見たら、全く差がなかったとのこと。どうやって解析・比較したのか、ちょっと興味があります。
将来、村上春樹の回顧展があるとしたら、何が展示されるのでしょう。キートップがすり減った使い込んだキーボードと一緒に、一太郎のCD-ROMが展示されることになるのだろうか。
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