■ ショスタコーヴィチ:交響曲第10番 〜フェドセーエフ80歳記念ツァー  (2012.10.20)




久しぶりにサントリー・ホールへ、フェドセーエフ80歳記念ツァーと銘打ったコンサートに行ってきた。2012.10.17(水)。行き帰りとも強い雨にうたれた。コーヒーでもと思ったのだが、周辺の様子もちょっと変わったようである。ビル2階の丸善も改装されて文具コーナーが無くなり書籍部門が充実した。


チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラは初見参と思ったが、かつてのモスクワ放送交響楽団が1993年に改称したらしい。ロジェストヴェンスキーを覚えている。1974年からフェドセーエフが率いているとのことだ。フェドセーエフの、写真で見るコワモテ・イメージとは違う風貌にちょっと戸惑う。


さすがに、馬力のある芯の太い強力なオケの威力を満喫しました。本日はたまたまS席のチャンスを得たので、オケの奮闘ぶりを間近に見られた。オケは対向配置。コントラバスが正面の最終列に並ぶ。9台だったか、ゴリゴリ鳴り響く。フェドセーエフは80歳とのことだが、柔軟な指揮ぶり。指揮棒は使わない。

最初の曲、スヴィリードフは初めて聞く名前。描写音楽というか映画音楽風である。静かなイメージで吹雪の舞う風景が目に浮かぶ。次の《スペイン奇想曲》の演奏が始まると、オケの輝きとか楽器の彩りが前曲とは、まったく違うことに気づく。さすがにリムスキー=コルサコフだ。

メインはショスタコーヴィチの交響曲第10番。長大な第1楽章が印象的だ。静かな、うめくような弦の合奏で開始する。静謐な響きが続く。どこか「悲歌」といったイメージが伝わってくる。解説によれば、この曲はスターリンの死(1953)の翌年)に作曲されたとのことだ。どこかに解放的な気分が潜んでいるのだろうか。途中でオケの強奏で大きな盛り上がりに達する。飽和感が続くが、野放図ではない。
第2楽章は明らかに戦争の音楽だろう。回想があるのか。この辺りのオケの演奏はまさに本領発揮で圧倒的だ。金管とかティンパニの強打もすごい。
第3楽章は静かな第1楽章の気分を引き継いでいるようだ。
終楽章。オーボエやバスーンが活躍。ものさびしさを醸す。前楽章のテーマがまた出てくるようだ。勝利を確認するフィナーレだろう。

<プログラム>
・スヴィリードフ:交響組曲《吹雪》〜プーシキンの物語への音楽の挿絵〜
冬の道、ワルツ、婚礼の儀式、軍隊行進曲、ロマンス、ワルツ・エコー
・リムスキー=コルサコフ:《スペイン奇想曲》
・ショスタコーヴィチ:交響曲 第10番
<アンコール>《白鳥の湖》からスペインの踊り

管弦楽:チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラ
指揮:ウラディミール・フェドセーエフ


ショスタコの作品については、いつも『ショスタコーヴィチ全作品解読』(工藤庸介著、東洋書店、2006/9刊)を参考にしている。丁寧で誠実な解説に啓発されます。 → こちら
交響曲第10番については、カラヤン/BPO盤が群を抜いて素晴らしいとのこと。


■ フェドセーエフ指揮 ショスタコーヴィチ 交響曲 第10番 (2003.9.16)

東京フィルハーモニー交響楽団 第678定期演奏会のメイン・プログラムはショスタコーヴィチの交響曲第10番。指揮はウラディミール・フェドセーエフ。サントリーホール、2003年9月12日(金)。

この交響曲は苦手である、どの楽章も同じような暗いテーマが繰り返される。交響曲を聞いたという爽快感が残らない。あのショスタコーヴィチ得意のパロディもない。もちろん、深いメッセージがあるのだろう。第2楽章が「スターリンの肖像」だということだけはどうにか理解できたのだが。今回はアンコールの仮面舞踏会のワルツで何とか救われました。

フェドセーエフは最初は指揮棒を持たずにやっていたのですが、途中の楽章から指揮棒を取りましたが理由があるのでしょうか。特別な変化を聞き取ることはできませんでしたが。久しぶりに東フィルから低音弦のゴリゴリした緊迫感のある音を聞きました。


■ アヌ・タリ指揮 ショスタコーヴィチ交響曲 第9番 (2003.6.16)

東京フィルハーモニーの2003年5月の定期演奏会は、エストニアの女性指揮者 アヌ・タリの初登場。2003年5月29日(木)、オーチャードホール。

・エッレル:交響詩《夜明け》(日本初演)
・プロコフィエフ:チェロ協奏曲第2番《交響的協奏曲》
チェロ:ヤン=エリック・グスタフソン
・トルミス:序曲 第2番(日本初演)
・ショスタコーヴィチ:交響曲第9番

プロコフィエフの《交響的協奏曲》は、何かぴんと来ない演奏でした。指揮者のとらえている全体像が聴衆に伝わってこないもどかしさがありました。チェリストにも感心しなかったのですが、これはこの曲を今日初めて聞いて戸惑ったこちらの責任か。

ショスタコの演奏には感心しました。自家薬籠中の物ということでしょうか。ショスタコーヴィチの第9は、軽妙洒脱。ロッシーニ、プロコフィエフ、おまけにムソルグスキーのおどろおどろした響きも聞こえます。実に軽々とあっさり指揮したと思います。まだ31歳ということですが、女性指揮者侮るべからず。

アヌ・タリ 1972年エストニア生まれ。幼少よりピアノを学び、91年タリン音楽高等学校を卒業。その後エストニア音楽アカデミーで指揮を学び、95年ディプロマを取得した。95年よりヘルシンキのシベリウス・アカデミーにてヨルマ・パヌラのマスター・クラスに参加し、98〜2000年にはサンクトペテルブルグ音楽院にてイリヤ・ムーシン、レオニード・コルチマーに師事。定期的にエストニア国立響を指揮している。(東フィル プログラムより)



■ ショスタコーヴィチ 《チェロ協奏曲第1番》 (2002.9.10)

東京フィルハーモニー第665回 定期演奏会は不思議なプログラミングで、ショスタコーヴィチとブルックナーの組み合わせ。ショスタコはチェロ協奏曲 第1番、チョン・ミョンフン指揮、独奏者はチョー・ヨンチャンである。ブルックナーは交響曲 第7番という重量級。既にサントリーホールでの演奏を7日に終えているのでオーケストラの練度も上がっている模様。9月9日(月) オーチャードホールでの演奏を聞いた。

ショスタコでチョー・ヨンチャンは最終楽章で弦を切ってしまうほどの熱演。一方ブルックナーは、このところの東フィルの実力を発揮した明晰な演奏だったと思いました。とくにホルン奏者は大変だったでしょうね。ショスタコでは、どちらかというと皮肉っぽい役割ながら、活躍の場が続きましたが、一転してブルックナーではスケールの大きい牧歌的な響きを出すというので。改めてホルンの実力を見直しました。

ショスタコーヴィチ 《チェロ協奏曲第1番》は、事前に公開リハーサルを見ていたこともあり、興味津々でした。第1楽章は、ロッシーニを思わせる快活な開始。ショスタコーヴィチらしい諧謔的なリズムが印象的です。そして解説の野上由紀夫さん言うところの「4音モチーフ」が響きます。チェロとホルンがよく呼応します。今回のホルンは実に立派な演奏だったと思います。ティンパニの一撃で第1楽章は終わり。

第2楽章は、抒情的な音楽。ショスタコーヴィチのなかでは最も内省的な音楽ではないでしょうか。ボロディンのノクターンにも通じる響きを聞き取りました。ここでもホルンの静かなゆったりとした演奏にひかれました。第3楽章はチェロのカデンツァですね。チョー・ヨンチャンのテクニックはたいしたものだと感じました。軽々と弾きこなします。

第4楽章。オケとの鋭角的な対決、舞い降りるフルート、木管。ティンパニの強い響き。やがてホルンとの対話。チェロはあまりの熱演に弦を切ったのでしょうか、突然の楽器交換。ちょっと興が殺がれたのは残念です。やはり、交換した楽器では、響きが全然違いましたね。この楽章もホルンは絶好調でした。このチェロ協奏曲、これから好きになりそう。

アンコールはバッハの無伴奏だったと思うのですが、ゆったりした演奏ではあるものの、やや平板に感じました。楽器のせいでしょうか。



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