■ 『システム障害はなぜ起きたか』 みずほ銀行トラブルの教訓 (2002.7.28)
2002年4月、みずほ銀行のトラブルが1カ月近くも続いた。ATMが使用できない、口座振替ができない等々。原因は4月1日に稼働した、情報システムの障害であった。本書の狙いは、情報システム障害の真の原因を探り、こうしたシステム障害を繰り返さないための教訓を引き出すことにある。
日経コンピュータは、「企業や組織を支えてきた情報システムは現在、危険な状態に入りつつあり、早急に抜本的な対策を講じる必要がある」という。ひとつは、既存の情報システムの肥大化と老朽化。ふたつめは、多くの企業の経営トップが、情報システムの価値やリスク、現場の苦労も何も分かっていないことだという。
みずほの事例から引き出せる教訓は、(1) 経営トップの無関心とシステム責任者の不在――本書で繰り返し主張されるテーマ、そして(2)
大規模プロジェクトにおける「プロジェクトマネジメント」の欠如だと断言する。
みずほフィナンシャルグループは、旧第一勧業銀行、旧富士銀行、旧日本興業銀行の3行を経営統合したもの。3行の統合にあたり、みずほ銀行の情報システムは、第一勧銀と富士銀の勘定系システムをそれぞれ残し、リレーコンピューターを新たに導入して両システムを接続する方式を採用した。みずほ銀行のシステムの一本化は先送りされたのである。
また、みずほコーポレート銀行の勘定系システムの統合が難しいと判明したこと、さらに予想外に顧客が多くなったことから、口座振替データの振り分け処理のうち、1回で5万件以上の振分をする場合は、みずほ銀行で処理することになった。口座振替プログラムは、第一勧業情報システムが開発を担当し、日立の大型コンピューターで動く。
今回のみずほ銀行のトラブルは、口座振替プログラムと対外接続系システムが引き金となっている。
これらは、ある意味では非常に地味な領域である。第一勧銀は富士通、興銀と日立は、勘定系のシステムの機能強化に忙殺され、結果として、口座振替プログラムと対外接続系システムのほうは、開発や管理がお留守になっていたのではと推測する。これらのプログラム修整は、第一勧銀/第一勧銀情報システムの担当であり、富士通や日立はかかわっていなかった。
◆『システム障害はなぜ起きたか――みずほの教訓』 日経コンピュータ編集、日経BP社、2002/5
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