■ 斎藤美奈子の『誤読日記』 意外とオジン的かも (2005.8.4)
斎藤美奈子はもう書評界のブランドである。サービスの質の高さで裏切られることはない。
本書を手にとってを読む人は、@斎藤美奈子の切れの良い啖呵を楽しみたいと思う人――誰を相手に、どんなワザで臨むのか。手練の名人芸を楽しみたいと。A彼女がどんな本を俎上にのせているのだろうか――たとえ悪口のメッタ切りであっても読んでみたいと思う人だろう。
大新聞の読書欄に取り上げられる、もっともらしい本の数々にウンザリしている人間には目からウロコである。こんなにもアホらしいけどタメになる本があるんだ、と。
いわゆるビッグネーム――立花隆・丸谷才一とか、朝日新聞・東京大学とか――に対峙するとき、舌鋒はときに鋭くなりますね。『闊歩する漱石』(丸谷才一著)を評して、これほどご陽気な漱石論は初めて読んだと、海老にたっぷり衣をつけた天ぷらのやう、と喝破するのだから。天声人語については、得意ワザは竹に木を接ぐ「ウルトラ接ぎ木」、と一刀両断である。また、東京大学出版会の『少年犯罪』でのグラフ不備の指摘など、当の著者は恐れ入りましたではないか。
バラエティに富んだ175冊である。話題の貴乃花親方が絵本『小さなバッタのおとこのこ』を出しているなんて初耳です。もう「相田みつを、って誰?」なんて言えません。
ちなみに最後のページの著者名索引から、2箇所以上で引用されている作家をひろいだすと。数人が該当しますが、しっかりと五木寛之、渡辺淳一が食い込んでいますね。意外と斎藤美奈子はオジンかな。
相田みつをの言葉をひとつだけ紹介しておこう。「他人の物差し/自分のものさし/それぞれ寸法が/ちがうんだな」
◆ 『誤読日記』 斎藤美奈子著、朝日新聞社、2005/7
→ 斎藤美奈子 『文章読本さん江』
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