■ 『図解雑学 失敗学』 創造的な技術につなげる (2008.6.10)
「失敗学」というユニークな取り組みが提唱されてからもう10年近くになるのではないか → こちら 『失敗学のすすめ』
失敗学とは、失敗から学び、同じ失敗の繰り返しを防ぐだけでなく、創造的な技術を生みだそうというものだ。
失敗学では「失敗」をつぎのように定義している。「人間が関わったひとつの行為が、望ましくない、あるいは期待しないものになること」。失敗にはとかく負のイメージがつきまとっている。失敗学における基本姿勢は、失敗を否定的にとらえるのではなく、プラス面に着目して有効利用すること。
この本は、「失敗学」の基礎知識から始め、具体的な事例をあげて、どのように取り組むべきかをまとめている。取り上げられている事例には、六本木の森ビルで起きた大型回転ドアに男児が挟まれた事故(2004年)、JR福知山線脱線事故(2005年)など。
失敗事故そのものを具体的に例示するのは、本書のタイトルに図解とあるように効果的である。失敗という抽象的な概念を絵で示すことはなかなか難しいのでは。本書の図版は、まるで大学の講義での板書の趣がある。残念ながら洗練されているとは言い難い。
創造的な技術を生みだすこと――失敗の有効活用には、その原因追及が欠かせない。
本書に挙げられている、人的原因の数々。実務的に活用できそうと感じる。
次のような10の原因があるという。
@欲得:経済的利益や社会的地位などに目がくらんだ
A気分:沈んでいたり高揚していた
Bうっかり:見過ごしや忘れでつい判断を誤った
C考え不足:思慮が浅かったり、まったくない
D決まり違反:ルール無視や手抜き。ルールに対して無知だった
E惰性:マニュアルに寄りかかって考えたらずだった
F恰好:体面のとらわれたり、必要以上に恰好をつけようとした
G横着:他人に責任転嫁したり、手を抜いたり、本来やるべきことをやらなかった
H思い入れ:強い使命感や生きがいをもっていたことが、逆に思い入れが強すぎた
I自失:まったく未知の事態に遭遇したり判断できないような状況で自失状態になった
◆『図解雑学 失敗学』 畑村洋太郎、ナツメ社、2006/8
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