■ 『地球46億年 気候大変動』 地球気候の過去・現在・未来 (2024-2-19)
いま人類にとって喫緊の課題は「地球温暖化」対策である。本書は、地球史スケールでは気候は激しく変動してきたことを教えてくれる。
そして先人の科学的解明が進み、規則性があることを。それにしてもまだまだ「炭素循環」など不明点はつきない。
われわれにはこれからも普段の努力が求められる。
地球上で最初に、光合成によって酸素を合成する能力を持った生物はシアノバクテリアである。
シアノバクテリアによって大量の酸素が供給され、酸素濃度が急上昇する。
この結果、地球上には多様な生物が棲息できる環境が整う。
約5億4000万年前の「カンブリア爆発」とよばれるイベントでは1万種以上の生物が誕生した。
恐竜の全盛期の白亜紀(約1億4500万〜6600万年)では、平均気温24〜29℃である。温室地球の時代だ。植物化石の気孔密度などから、当時の大気中の二酸化炭素濃度は1000〜2400ppmと推定される。現在は400ppmなので最大値は6倍に達する。また白亜紀の火山活動は現在よりはるかに活発だった。火山の噴火口や火山帯の割れ目からはマントル内部にたまった二酸化炭素が大量に排出されたのだ。白亜紀の7500万年以上の長期にわたって温暖化が続いた。
恐竜が約6600万年前の白亜紀と新生代との境に突如として姿を消す。原因はメキシコのユカタン半島に落下した直径10キロほどの巨大隕石である。新生代が始まると、地球は急速に寒冷化して、北極や南極に巨大氷床が常時存在するアイスハウスの時代に突入する。約3400万年前には、南極大陸に巨大な氷床が形成され、現在に至るまで寒冷化した気候が続いているのだ。
地球史的なタイムスケールでみると、地球は今なお、アイスハウスの時代にあり、その中の比較的温暖な間氷期だ。新生代は第4紀に入ってから氷期と間氷期を繰り返しており、これまでのサイクルでいえば、次は氷期がくる順番になる。
大気中の二酸化炭素濃度が極端に増えると温室地球が生み出される。たとえば全地球平均の気温が産業革命前より1.5〜2℃上昇すると、
地球の気候はホットハウスアース(灼熱地球)という新しいステージに変わる。とりわけ深刻なのが氷床の融解による海面上昇だ。
グリーンランド氷床が融解すれば、世界の平均海面は6m上昇するという。さらにホットハウスアースになると海面上昇は今日より10〜60m上昇すると予測されている。
なぜ、大きな気候変動があるのか。2つの要因があるという。二酸化炭素濃度と天文学的要素である。
以下、個別に説明しよう
(1)二酸化炭素濃度
100万年スケールの気候変動の陰にはつねに地球内部のマントルやプレート運動が深く関わっている。海には大気から二酸化炭素が溶け込み、一連のプロセスで固体となり、海底などに沈積することで大気中の二酸化炭素が除去される。大気二酸化炭素濃度が600ppmになると南極氷床が一気に現象に転じ、デンジャーゾーンに入る。600ppmは現在の二酸化炭素濃度400ppmの約1.5倍。南極氷床の成長と融解がこれまで考えられているよりもかなり速いペースで変化し、温暖化に対して脆弱であることが知られるようになった。
(2)天文学的要素
最初に「天文学的要素原因説」を提唱したのはジェームズ・クロール。地球が太陽の周りを回る軌道の要素に変化が生じると氷から間氷期への切り替わりが起きると主張した。クロールの研究を引き継いだのが天才科学者ミルティン・ミラコビッチ。彼は夏の日射量変化がきわめて重要なカギを握っていることに気づいた。ミランコビッチが日射量計算に用いた地球の公転軌道要素は、自転軸の傾斜角、離心率、歳差の3つである。
(@)傾斜角
地球の自転軸は公転面に対して23.4度傾いている。それらが22.0〜24,5度の間を約4万年の周期をもって変化する。この変化は季節性の強さに影響する。傾きが大きいほど季節性が強く ――つまり夏はより暑く、冬はより寒くなる。もし傾斜角がゼロだった場合、太陽から地球に到達する日射量は夏も冬も同じrになり、季節そのものがなくなる。
(A)離心率の変化
地球は太陽の周りを楕円軌道で回っている。この楕円軌道が真円に近づくかどうかで太陽と地球との距離は1820万キロメートル以上も変化し、地球が受け取る日射の総量が変化する。太陽はその引力で地球の公転軌道を真円に近づけようとするものの、土星や木星といった巨大惑星の巨大な引力を受け、公転軌道が変形し楕円軌道の扁平率が変わるのだ。この周期は10万年という。
(B)歳差
地球は完全な球体ではなく赤道方向が南北両極を結ぶ方向よりも大きい。ミカンのような形。そのため高速回転しているコマのように回転軸もゆっくりと円を描く。太陽から離れる方向にあるときは太陽側に倒れかかるように、この周期は約2万6000年である。
ミランコビッチはこれらの3要素のひとつ一つが与える影響は小さいが、3つが重なり合うと、巨大は氷床な生み出したり、世界の海面を100メートル以上も低下させるような大変化をもたらすと主張した。地球では少なくとも過去280万年にわたって、地球の公転軌道変化に対応して氷期と間氷期が4万年や10万年周期で交互に繰り返す気候変動「ミランコビッチサイクル」が続いてきた。
現在の地球の二酸化炭素濃度が地球史的にみても異常な高さにあるのは確かだ。二酸化炭素濃度は18世紀の産業革命以降に急上昇しており、原因が人類にあるのは化学指標の結果からも示されていて議論の余地はない。氷期は現在よりさらに10℃以上気温が低かったことが分かる。氷期ー間氷期のサイクルはおよそ10万年と、4万年周期。大気中の二酸化炭素濃度は、氷期は約180〜200ppmの間で振幅し間氷期は約280ppmとほぼ一定。ちなみに2018年現在の大気に酸化濃度は400ppmだ。過去80年間の気候データではこのレベルに到達した時期はまったく見当たらない。
地球の炭素貯蔵庫の中で、海は、陸上の炭素貯蔵をはるかに上回り、現在の大気の45倍以上もある。海の状態がほんの少し変わるだけで、大気への影響が顕著に現れるのだ。気候の寒暖のハンドルを握っているのは海なのである。
とくに貯蔵量が大きいのが深海だ。地球全体に働く、熱塩循環の大きな変化による。熱塩循環の機能が低下すれば動的平衡が崩れてしまう。
氷床の融解など、さまざまな理由でにわかに供給された淡水により、海水の塩分が低下したことによって、熱塩循環の力が弱まり北半球では寒冷化が進み、南半球では温暖化が進んだと考えられている。
◆ 『地球46億年 気候大変動 炭素循環で読み解く、地球気候の過去・現在・未来』横山祐典、ブルーバックス、2015/10
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