■ 『地学ノススメ』 日本列島のいまを知るために (2024-11-8)
日本の高校・大学ではいま、「地学離れ」が進んでいるようだ。著者は、日本人の「地学リテラシー」は中学生レベルで止まったままだと、危機感をあらわにしている。地球の構造から巨大地震・巨大噴火の可能性まで、そして、激甚災害が近い将来に控えているのだから。「地学」こそ、日本人に必須の教養として、いま身につける必要があると。
今日現在もっとも警戒されているのが、南海トラフを起因とする「西日本大震災」だ。静岡県から宮崎県までの太平洋沿岸で起きる海の大地震。南海トラフとは、海のプレートが無理矢理沈み込むことによってできた巨大な溝状の谷、深さ4000メートル。これに沿って地震の巣がある
世界中で発生する地震の10パーセントが日本で発生するのだという。地震は、「プレートの動き」によって起きる。動きは非常にゆっくりしたもので1年に4〜8センチくらいだ。東日本大震災(2011-3-11)では、日本列島は5.3メートル海側に移動したという。大平洋岸では地盤が最大1.2メートルも沈降した。
日本列島の周辺には4つのプレートがひしめいている。世界的に見ても巨大地震の巣といっても過言ではない。日本列島があるユーラシアプレートの下に、フィリピン海プレートが、毎年4センチの速度でもぐっている状態だ。。海洋プレートが沈み込むにつれて、大陸プレートの先端が引きずり込まれる。その結果、何万年にもわたって歪みがたまっている。この歪みが限界に達すると、元に戻ろうとして大陸プレートが一気に跳ね上がり、海底で巨大な地震が発生する。海水を一気に持ち上げるので津波が発生し沿岸を襲う。
南海トラフ大地震は、大きな震源域として 東海地震、東南海地震、南海地震が想定される。マグニチュード9レベルの超巨大地震だ。さらに、東海・東南海・南海の3つが同時発生する「連動型地震」という巨大地震のシナリオもある。この西日本大震災では日本経済は破綻するだろう!
地震学者は、南海トラフ巨大地震は発生時期が科学的に予測できるほとんど唯一の地震だと言っている。この巨大地震は約20年後に起きると予測している。過去の地震の発生パターンを統計学的に求め、最近の地震活動のデータに当てはめて、過去のデータを総合判断した結果である。
地学に関する最近50年間の最大の知見は、プレート・テクトニクス理論の誕生である。ドイツの地質学者ウェゲナーによって1912年に、このアイデアが発表された。地球の表面はたえず動くプレートによって更新されているということ。プレート・テクトニクス理論によって、地球を見る視点は静的な見方から動的にと変化した。地震や火山など複雑な現象をシンプルに解釈することが可能になったのだ。地球科学の革命と呼ばれた。
プレートは巨大な岩板、厚さは平均して100キロメートル。プレートは大西洋中央海嶺から生み出されカリフォルニアや日本列島の近くで沈んで消えて行く。地球の表面は10枚ほどのプレートに覆われている。地球は地殻と、マントルと、核の3つで構成される。プレートは地殻そのものではない。マントル最上部にある硬い部分と地殻がくっついて1枚のプレートとして水平移動するのだ。軟らかくなったマントルの上を硬いプレートがゆっくりすべっていくイメージだ。
著者は、多くの日本人に地学に関心を持ってもらいたいという。日本列島で始まった種々の地殻変動がいかなるメカニズムで起きているかを理解し効果的な対処をしていただきたいと。東日本大震災で日本人が学んだのは「想定外」を生き延びるための知恵である。
◆『地学ノススメ 「日本列島のいま」を知るために』鎌田浩毅、ブルーバックス、2017/2
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